□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年1月18日発行 第32号 ■ ============================================================= 日本政府はチュニジアの政変をまったく読めなかったのか ============================================================== チュニジアの市民革命の動向に私は注目する。願わくば、それが中東 全域に広がって欲しい。 私がそう願う最大の理由は、中東の民主化こそがパレスチナ問題の公平 で永続的な解決に結びつくと思うからである。 中東の殆どすべての国は独裁・世襲・軍事政権だ。 これらの政権が、大衆の声を無視して保身のために米国・イスラエルに 屈し、パレスチナ問題を見放してきた。 米国の言う民主化ではなく、本物の市民革命が拡がって行く事を願う。 しかし、私はチュニジアの政変に注目したもう一つの理由がある。 それは1月16日の朝日新聞が、日本政府がこのチュニジアの政変を まったく予想してなかったと、次のように書いていたからだ。 朝日新聞はこう書いていた。 ・・・「私も12月に(ベンアリ)大統領にお会いしてきたので、大変 驚いている」 訪韓中の前原誠司外相はソウル市内で記者団にそう語り、事態の急変に 驚きを隠さなかった。 海外へのインフラ輸出戦略を掲げる民主党政権は、官民合同の会議、 「日本・アラブ経済フォーラム」を昨年12月、チュニスで開催したばかり ・・・チュニジアを足がかりに日本企業の中東・北アフリカ地域への進出を 目指そうとした民主党政権にとって、今回の事態は、大きな誤算といえる・・ メドベージェフ大統領の国後島訪問の時は、外務省の情報不足に怒って 河野駐露大使を更迭した前原外相である。 今度は外務省の情報不足を怒らないのか。 それともチュニジアの政変などはどうでもいいことだから寛容なのか。 あるいは今度の政変は、インターネットや携帯電話の影響であっという間 に拡がった政変だったから、誰も予測できなかったというのだろうか。 しかし、ウィキリークスが公開した米公電では駐チュニジア米国大使が ベンアリ大統領一家の腐敗振りを把握し、報告している(1月18日朝日)。 たかがデモの高まりであるのに、ベンアリ大統領は辞任ではなくすばやく 亡命している。 外務省はチュニジア情勢をどこまで把握していたのか。 前原外相は外務省の情勢把握の実態についてなぜ語らないのか。 河野大使の更迭はパフォーマンスだったのか。 メディアはその事を記者会見でなぜ前原首相にたださないのか。 今後のチュニジア情勢の報道の中で、その事に言及するメディアが出て くる事を期待する。 了 お詫びと訂正 自賠責値上げに関するメルマガ第30号で「恒常的インフレ」と 書いたのは「恒常的デフレ」の間違いです。お詫びして訂正させて 戴きます。
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)