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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

TPPを日米経済摩擦の再来とさせてはいけない   
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年1月16日発行 第29号 ■    =============================================================   TPPを日米経済摩擦の再来とさせてはいけない          ==============================================================  TPPは日米経済摩擦の再来となる。  こう書けば皆、驚くであろう。  確かにあの時のような米国の不合理な対日圧力はない。  しかしTPPに日本を参加させようとしている米国の思惑はあの時と 同じだ。  すなわち米国の経済利益のためにこれを推し進める。日本がそれに参加 しようとすると、これを好機とばかり次々と無理難題の注文をつけて来る。  その結果TPP参加交渉は日米間の熾烈な利害交渉の場になる。  そして最後は米国の恫喝まがいの要求となり、日本が譲歩させられて 終わることになる。  そういう意味での日米経済摩擦の再来ということだ。  日本では農業開放のことばかりが大騒ぎになっているが、決してそれだけ の問題ではないのだ。  そのことが、ワシントンで行われたはじめての事務レベル協議で明らかに なった。  15日から16日にかけて報道されている記事の中に踊っている言葉を 例示的に並べてみるとこうだ。  米側は、米国産牛肉の輸入制限問題や、郵政民営化に伴う外資系企業の 競争条件確保、自動車の安全技術基準の明確化などについて改善を要求 (1月15日毎日夕刊)。  米国は従来の自由貿易協定(FTA)を上回る幅広い目標を目指している と強調。モノだけではなくサービスや市場アクセスも重視しているという 基本姿勢を述べた(1月15日読売夕刊)。  日本側はTPPの参加条件など詳細な情報は得られなかった模様。米通商 代表は日本との詳細な協議は「時期尚早だ」と語った(1月15日朝日夕刊)。  オバマ政権は輸出拡大による経済成長を掲げており、TPPでは規制改革や、 効率的な物流網の構築、中小企業がお互いに海外進出しやすい仕組み作りなど を盛り込みたい考え(1月16日読売)。  日本側は、米国でのリチウムイオン電池輸送の規制強化案などについて米側 に懸念を伝えた(1月16日東京)。  これを要するに広範囲にわたった日米包括経済交渉となるのだ。  その交渉内容の具体的な姿は米国でさえも未だ持ちあわせていない。  ということは、これからどんどんと無理な注文が出てくる可能性があると いうことだ。  米国の交渉窓口が米通商代表部(USTR)であることも日米経済摩擦の 時と同じだ。大勢の弁護士たちが用心棒として雇われて行なわれるルール づくり交渉において、縦割りの日本の官僚たちに勝ち目はない。  ましてや官僚をまるで使いこなせない菅民主党政権ではこの交渉は乗り切れ ない。  その菅首相が政治生命を賭けるといって旗を振っている。茶番だ。  これを要するに日本にとって不利な経済交渉を日本の方から急いで始める 必要も合理的根拠もない、ということだ。  まずは日本国内の結束と意思統一だ。強力な日本政府の確立だ。  まずはTPPの実態を見極める事だ。  まずは先行する国々と米国の交渉の推移を見極めることだ。見ているがいい。 米国と他の国の交渉もそう簡単に進むことはない。  それらを見極めた上で、日本の戦略を固め、強い政府で交渉に臨む。  これである。  決して6月に結論が出せる問題ではない。その時までに結論を出さなければ ならない問題ではない。  日米経済摩擦の再来を自らの手で招く愚を犯してはいなけい。                              了

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