□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年1月13日発行 第21号 ■ ============================================================= 首長の退職金課税強化の報道の虚実(新聞記事では何もわからない) =============================================================== 新聞報道では本当の事は何もわからないという一つの典型例を紹介したい。 1月13日の各紙は、政府が知事や市町村長が受け取る退職金に対する 優遇課税措置を見直す方針を決めたと一斉に報じている。 一斉に報じたということは政府関係者が話したということだ。決して スクープではない。新聞社が独自で調査した結果の報道ではない。 従ってその記事は本当の意味で「真実」を報道していない。 ウソではないが事実の一側面しか伝えていないという意味で不正確、 不十分であり、結果として政府の情報操作の片棒を担ぐ危険を冒している おそれがあるのだ。 私がそう思うのは特に次の二点である。 一つは、退職金は老後の生活資金に充てられることが多いため税制上の 優遇措置が講じられている(読売)という記述だ。 それはもちろんウソではない。 しかし税制の決定を独占する財務官僚が国民のためを思って税制を決める ということはまずない。 退職金に対する税制も、本当の理由は自分達が繰り返す天下りの「渡り」 による退職金に、その都度、「重い」課税をかけられてはたまらないという 理由がある。自分達のためにお手盛りで優遇税制を決めていたのだ。 このことは内部の事情通であれば誰も知っている。 もはやそれが通用しなくなった。だから公務員の天下り退職金の優遇税制に 手をつけざるをえなくなった。 公務員の天下りに手をつけざるを得なくなった以上、首長の退職金にも手を つけざるを得ない。 なにしろ官僚の天下りと同様に、短期間(4年毎)の勤務で首相や閣僚より も高額の退職金をもらっている首長だけ優遇する事は許されない、という ことなのである。 二つ目は課税強化の内容である。 報道によれば、「二分の一課税」の優遇措置の打ち切りであるという。 すなわち、退職金の課税対象算出に際しては、税制控除(退職控除)を差し 引いた課税対象額の2分の一を課税対象にするという優遇措置が認められて きたが、この優遇措置を、首長や勤続5年以下の企業や団体役員の退職金には 打ち切る。 当然だろう。 しかし退職金への優遇課税はほかにもある。 退職金の場合はたとえ高額であっても、通常の所得課税に適用される累進 税率が20%で頭打ちになっているのである。 これも財務官僚が決めたお手盛り措置である。 首長や天下り官僚の高額退職金に累進税率を適用し、37%まで課税する。 ここまで行かない限り本当の改革にはならない。 これを指摘する記事は見られない。 税制はあまりにも複雑である。 複雑であるということはそれを決める財務官僚の思う壺である。 本当の事は何も分からないのだ。 報道記者は、政府の説明を右から左に記事にするのでなく、複雑な税制の裏 に潜む思惑や利害関係を追及し、それを国民に明らかにする必要がある。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)