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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

普天間基地移設の日米合意は見直すしかないこれだけの理由
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2011年1月5日発行 第6号 ■       ===============================================================    普天間基地移設の日米合意は見直すしかないこれだけの理由     ===============================================================  1月4日の毎日新聞が、米外交問題評議会の上級顧問であるシーラ・ スミス女史とのインタビュー記事を掲載していた。  そこに普天間基地移設問題についての決定的に重要な証言があった。  すなわち彼女はこう言っている。  「・・・(普天間基地移設問題は)数年間は進展が期待できないのでは ないか。東京と沖縄だけの話ではなく、米政府も米連邦議会との間でグアム 移転経費の問題を抱えており、非常に複雑な問題だ・・・」  オバマ政権の代弁者のような人物がこう言っているのだ。これは凄い事だ。  なぜ凄いのか。たとえて言おう。  もし沖縄県民が辺野古移転を受け入れたとする。それとのパッケージで 沖縄海兵隊のグアム移転を要求したとする。  それでも米国は約束したグアム移転ができないのだ。  日本政府が日米合意通りグアム移転経費の6割を負担を認めるとする。 それでも米国は約束通り沖縄海兵隊をグアムへ移転させる事はできないのだ。  なぜか。  それは米連邦議会が、日米合意で決めたグアム移転経費の米国負担分を 認めないからだ。  本来ならば米政府が日本政府に頭を下げて、「申し訳ないが日米合意の 変更を了承してもらえないか。日本政府の予算でグアムのインフラ整備を やってもらえないか」と乞い願うのが筋だ。  つまり2006年に合意し、それを2010年5月28日に踏襲した 日米合意を、米国の都合で見直さざるを得ない状況の変化が起きたのだ。  言い換えれば、日本政府は、その気になれば、当然のように日米合意の 見直しを要求できる。そして米国はその見直し要求を断る事はできない。  しかし日本政府は決して日米合意を見直そうとは言い出さない。  それどころか日米合意をそのままにしながら、日米合意で約束した経費 負担の増額を受け入れようとしている。  さすがに政府予算で負担する事は国民の手前できない。  そこで考えだされたのがインフラ海外支援を担当する国際協力銀行の資金 で面倒を見るということだ。  これならいちいち国民の了承を得る必要は無い。国際協力銀行の一存で 決められる。  因みに菅民主党政権は昨年12月7日に、2008年10月の行革で日本 政策金融公庫に統合された国際協力銀行を再び分離・独立させる事を決めた。  これは明らかに行革の流れに反する。  それにも関わらず分離・独立させたのは国際協力銀行の決定権を強化する ためだ。  それは、不況下の日本経済の打開のために、原発や新幹線など大型プロ ジェクトの海外輸出をてこ入れするための国際協力銀行の強化だという事に なっている。  しかし、同時にまた国際協力銀行の資金でグアムのインフラ整備を請け負う 決定を容易にする為である。  なぜそれほどまでして日米合意の見直しを避けるのか。  それは日米合意を見直せばパンドラの箱を開ける事になるからだ。  小泉自民党政権下では国民に一切説明なく米軍再編への協力が決められた。 グアム移転経費の日本側分担額も勝手に決めた。  しかし政権交代後の菅民主党政権下ではそうはいかない。  情報公開と説明責任が民主党政権のマニフェストだ。  そのマニフェストはとっくに破られているが、それでも日米合意の再交渉と なると国民は注目する。隠せない。ウソはつけない。  ところが日米合意の見直し作業を始めると、これまでの交渉のいかさま振り が明らかになる。  国民に隠してきた諸々の矛盾があぶり出される。  1995年の少女暴行事件で盛り上がった感情は在日米軍基地撤退要求 だった。それがなぜ代替施設をつくる事になったのか。  沖縄海兵隊のグアム移転は9・11事件後に始まった米国の米軍再編の一環 である。9・11事件よりはるか前の事件がきっかけで始まった海兵隊の 移転問題が、いつから米軍再編のための協力にすりかえられたのか。  沖縄海兵隊がグアムに移転することは米軍再編の一環として米国の都合で 決めたものだ。それなのになぜグアム移転経費を日本側が負担するのか。  海兵隊の主力がほとんどグアムに移転するのであるから、沖縄には海兵隊は ほとんどいなくなる。それにもかかわらずなぜ辺野古に前より立派な海兵隊の 基地が必要なのか。海兵隊が使わずに米軍が使うなどという説明を我々は一度 聞かされたことはない。じかし現実はそれしか考えられない。  米国の裁判所に従えば辺野古沖建設は環境破壊で認められない。米国の法律 で認められないものを米国は日本に要求できない。米国が要求できないものを、 なぜ日本が代わってつくってやろうとしているのか。  これまでに報じられただけでもざっとこれだけの疑問が浮かぶ。  本当はもっともっと驚くべき事実が隠されているに違いない。  許せないのは、これらの矛盾を国民に知らせることこそメディアの使命なの に、ひたすら普天間問題の迷走が日米同盟を損なう、早く解決せよ、と日本 政府に求めることしかしない大手メディア。  もはや大手メディアは米国の代弁者だ。売国新聞だ。  いまこそ普天間基地移設問題の日米合意は見直すべき時だ。  日本国民はそれを要求する当然の権利がある。  菅首相が抱える難問は山積している。  しかしその中でも最大の難問は普天間基地移設問題に関する日米合意の 見直しだ。  その難問をごまかし、春の訪米で「日米同盟の深化」を決めてくる。  これこそが最大の難問であり、至上命令である。  そこでは普天間基地の問題はほとんど言及されないだろう。  もはや日米双方とも普天間問題の解決には時間がかかる。  しかし急ぐ必要はない。急がないほうがいい。  「日米同盟の深化」さえ決めれば後はどうとでもなるのだ。  なぜなら「日米同盟の深化」によって、すべて米国のいう事を聞くという 対米従属の日米関係が完成するからである。  菅首相はその前に辞めるわけにはいかない。米国は辞めさせない。  なんとしてでも菅首相の手で「日米同盟の深化」という歴史的偉業をなし 遂げる必要がある。  そうすれば菅民主党の長期政権も夢ではない。  新年早々、異常なまでに小沢一郎を批判して、国民の目を小沢一郎の「政治 と金」の問題に集中させる理由がここにある。  小沢つぶしが米国、菅民主党、大手メディアの合作だと批判される ゆえんである。                                                            了                           

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