□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月31日発行 第289号 ■ =============================================================== 迷い続ける日本の安全保障政策 =============================================================== 今年最後の「天木直人のメールマガジン」は、やはり日本の安全保障政策 に関する記事で締めくくりたいと思う。 今日大晦日の各紙にわが国の安全保障政策の将来を占う次のような記事が 並んでいた。 そこには迷走する日本の安全保障政策があぶりだされている。 迷走し、悩み続けた果てに、結局は米国の要求に屈するしかない日本の 政治のやるせない対米従属性が予告されている。 1.弾道ミサイル防衛用ソフト 日米共同開発が頓挫(朝日一面トップ) 日米以外の第三国への供与について、日本側が要求する「事前同意」に 米国が難色を示し交渉が頓挫したという。 武器輸出三原則の見直し再燃は 必至となろう。 2.普天間ヘリ本土訓練案 首相訪米時、協力要請へ(読売一面トップ) 沖縄の基地負担軽減への糸口をつかみたい菅政権の打開策。移転先自治体 の反発が予想されるが、菅政権は米軍再編交付金を適用することを検討。 3.「尖閣奪還」演習 中国に配慮 菅政権の要請に米軍困惑(産経) 日米両国が12月初めに実施した日米共同軍事演習の実施前に、日本政府 は、中国を刺激しないために、米側に「尖閣諸島に特定した島嶼奪還演習」を 行なわないよう変更を求めていた事が、複数の米軍関係者の証言で分かった。 防衛省政務三役が「中国を刺激するような演習は控えるように」という指示 を陸上自衛隊に出していたという。米軍は困惑しつつも海上自衛隊との演習を 粛々と行なったという。 4.自民、日米安保改定を検討 太平洋で共同防衛(産経) 自民党は、政権を奪還すれば安保条約改定を米国に提起する方針を固めた。 「双務的な日米同盟」を目指し、集団的自衛権の行使を前提に日米双方が 太平洋地域で共同防衛義務を負う一方、在日米軍基地義務を条約から削除する 方向で検討。 これらの記事の内容について個々に論評する余裕はここではない。 いずれも大きな論点を含んでいる。その実現性さえも疑わしいものが多い。 しかし、ここで強調したい事は、次の二点である。 一つはわが国の安全保障政策が戦後の歴史の中で大きな曲がり角に差し かかっているということだ。 そして来年は間違いなくこれらの問題のいくつかについて方向性が出てくる。 その方向性とは、米国のご機嫌伺いを競い合っている自民と民主の二大政党 がこの国の政治を支配し続ける限り、憲法9条を否定する方向に向かうという 事である。 二つ目には、この流れに待ったをかける声がますますかき消されていく事だ。 大手メディアがこぞって日米同盟重視を鮮明にするだろう。日米同盟重視を 唱える学者や評論家がメディアに頻繁に顔を出し、それを繰り返す。 国民はその気にさせられる。 その一方で護憲政党である共産党や社民党が政治においてますます衰退し、 平和についてのメッセージを国民に伝えることが出来なくなる。 そのような来年の政治状況の中で、「天木直人のメールマガジン」は、日米 同盟の矛盾を今まで以上に声を大にして発信していく。 日米同盟の矛盾に苦しむ日本の指導者のごまかしを浮き彫りにして行く。 ごまかしでは強くなれない。 ごまかしていては正しい事はできない。 日米同盟から自立し、憲法9条こそ最強の安全保障政策である。その事に 国民が気づかない限り、この国に明るい未来はないと確信する。 それを発信し続けて行く。 了 本年一年間のご愛読をありがとうございました。 一日も欠かすことなく書き続けられたことを嬉しく思います。 最後に、今日の朝日新聞に掲載されていたオノヨーコさんの次の言葉を 引用して、新年から気分を新たに発信し続けていく覚悟とさせて戴きます。 読者の皆様にはどうか良いお年をお迎え下さい。 ことばのちから あなたのことばは 水に落とした小石が 世界中の海に ひびくように 永遠に かけめぐるのです。 その力を信じましょう。 山をも、海をも動かす 大きな力 Yes. オノ・ヨーコ 12月31日 2010
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)