□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月29日発行 第284号 ■ =============================================================== 官僚支配に屈して終わる菅・仙谷民主党政権 =============================================================== 政権交代に寄せた国民の期待をことごとく裏切って終わりそうな菅・仙谷 民主党政権であるが、その中でも最も象徴的な記事がこれである。 仙谷官房長官が28日、各省の政務三役会議に、事務次官、官房長に出席 するよう求めたという。今日(29日)の各紙が一斉に報じている。 各紙は一様にこれを「政治指導」の軌道修正・後退であると書く。 しかしその本当の理由を正面から書いたのは産経新聞だけだった。 すなわち産経新聞は、かつて仙谷官房長官が行政刷新担当相だった昨年 12月に、「大臣、副大臣、政務官で組織を運営していくなら、事務次官の 存在は必要なくなる」と事務次官廃止論をぶち上げた事を指摘する。 その仙谷氏が「真の政治主導は、官僚を排除することではなく、政と官が 一体となって取り組む事で実現される」と言って政務三役会議への事務次官 出席を求めた。 この180度認識を変えた仙谷官房長の姿こそ官僚支配に屈したのだと書い ている。 これこそがポイントなのである。 官僚が存在感を示すことができるのは官僚組織が後ろにあるからだ。 その官僚組織は事務次官を頂点とした出世競争のピラミッドがあるから 機能するのである。 事務次官という頭をなくせば、あとは横並びの局長が並立する官僚の単なる 集まりでしかない。 もちろんキャリア官僚の全員が局長になれるわけではない。局長になるにも 熾烈な出世競争はある。 しかし局長ポストは多数ある。 局長ポストにも軽重はあるが局長は局長で横並びだ。 ある局長が他の局長の命令を受けるということはない。 それどころか競い合い、喧嘩し合う事すらある。 それを束ねるのが官僚組織の頂点である事務次官のポストだ。 官僚はすべからくこの官僚組織のトップである事務次官を目指してすべての エネルギーを傾ける。 だからこれをなくすだけで官僚組織は崩壊する。 目標を失った官僚たちは漂流する。 嫌でも政治主導にならざるを得ないのだ。 その意味で仙谷行政刷新担当相の初心は正しかったのだ。 当時私はその事をメルマガでも指摘した。それが実現できればそれだけで 公務員改革は出来たも同然だと。 だからこそ官僚からの抵抗は激しかった。これだけは譲らなかった。 そしてそれから1年後、官僚組織は見事に復活した。 無能な政務三役会議に出て実質的に政策に関与していくようになる。 そして一旦は外された官僚たちが復帰した時は、今まで以上にその影響力は 強まるのである。 党が分裂し、政権維持さえおぼつかない今の民主党の政治家たちには もはや官僚に抵抗できる余力は皆無である。 官僚支配が復活したという本当の意味はこれである。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)