□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月26日発行 第277号 ■ =============================================================== 混迷する一方の「テロとの戦い」と日米同盟の将来 =============================================================== 中国の軍事力の増強や、突如として表面化した朝鮮半島有事によって、 日米同盟の重要性が声高に喧伝されるようになった。 当然のことながら、それに影響される一般国民は、やはり日米同盟は 重要だ、となる。 しかし米国にとっての日米同盟の重点は、テロとの戦いのために日本を つなぎ留めておくことに、はるかに大きな比重がある。 この事は米国の外交・安保政策を少しでも知っている者にとっては否定 できない事実だ。 それでは「テロとの戦い」の現実はどうなっているのか。 ガザ情勢、緊迫高まる(東京新聞)。 パキスタン北西部 女自爆テロ41人死亡(産経新聞)。 アフガン タリバンテロ激化(読売新聞) 米国対テロでイエメン大統領に行動要求(毎日新聞) これらは12月26日の朝刊各紙が報じているニュースである。 これに先立つ12月22日の各紙は、12月21日の発足したイラク 新政権の不安定さをこぞって報じていた。 要するに、2001年9月11日の米国同時多発テロとその直後に始ま った米国のアフガン攻撃、2003年3月に始まった米国のイラク攻撃以来、 「テロとの戦い」は中東全域に広がり、しかも米国の劣勢が年を追って明ら かになりつつあるのだ。 それどころか、オバマ大統領の発表とは裏腹に、「テロとの戦い」に対す る米国の勝利はもはやありえない状況だ。 ところが日米同盟と「テロとの戦い」の関係を正面から論じる論評が まったく見られない。 12月17日に閣議決定された新防衛計画の大綱においても、日本が 「テロとの戦い」に協力させられていく事に、まったくと言っていいほど 言及がない。 中東は確かに日本から遠い。 しかしそれが理由ではない。 政府も官僚も御用学者、評論家も、そしてメディアも、その現実から逃げて いるのだ。 国民にその現実を隠しているのだ。 朝鮮有事に巻き込まれるよりも、テロとの戦いに巻き込まれる事になる。 私はその可能性のほうが高いと思っている。 その時はじめて日本国民は知る事になる。 日米同盟は危険であり、決して日本の安全保障に寄与するものではないと いう事を。 政府やメディアに騙されていた事を。 来年がその年にならない事を願うばかりである。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)