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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

いまの日本ではイラク戦争を本気で検証することなど出来はしない
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月25日発行 第276号 ■       ===============================================================   いまの日本ではイラク戦争を本気で検証することなど出来はしない     ===============================================================  12月24日の朝日新聞に、いまこそ日本版の「イラク戦争検証委員会」 を立ち上げる時が来ている、と主張する特集記事が掲載されていた。  松本一弥という記者の記名入りのその記事の要旨はこうだ。  「・・・石破茂防衛庁官や福田康夫官房長官(いずれも当時)は証言 している。イラク戦争の支持は小泉首相の一存で決まった、と。  『小泉総理一人の判断に、国家の命運を委ねるのはまずいと思っていた』。 そう打ち明ける当時の政府関係者もいるほどだ。  その小泉首相はイラク戦争を支持した根拠をただの一度も説明しなかった。  要するに日本政府の意思決定過程はあまりにも不透明だった。  オランダ政府や英国政府は独立検証委員会を設置して真剣に検証を進めて きた。  今こそ日本もイラク戦争の検証を行うべきだ・・・」、と。  この主張に何の異存もない。  そして松本一弥氏はおそらく本気でそう読者に訴えているに違いない。  しかし、である。  私には、どうしてもこの記事が心に響かないのだ。  なぜか。  イラク戦争の検証を本気で行うという事は、イラク戦争の誤りを政府に 認めさせ、当時の指導者達の責任を追及する事である。  それは取りも直さず米国政府と、それに追従した当時の日本政府や官僚 たちを糾弾することである。  自民党以上に米国の機嫌取りをしているような菅・仙谷民主党政権下で そんな事が出来るはずはない。  菅・仙谷民主党政権がそれを許すはずはない。  日米同盟最優先を繰り返し、米国の手先になったような朝日新聞やこの国 の大手メディアが、それを日本政府に求め、支持するはずはない。  松本記者は言う。  日本でもNGO関係者らが「イラク戦争の検証を求めるネットワークを 結成した。それと連携する形で民主党の斉藤つよし衆院議員らがイラク戦争 の検証を求める議員連盟を結成した。政権が交代した今こそ、検証を政府に 求めて行きたいと意気込む」、と。  その意気込みは評価する。私もその動きの賛同人の一人に名を連ねている。  しかし、どうしても本気になれないのである。  自己満足の検証ならいざ知らず、本気で検証するつもりであれば、総保守化 する今の世の中に逆らって声を上げる勇気が必要だ。  政治家ならば、米国にひれ伏し、沖縄を見捨て、政権維持のためには平沼 赳夫氏のような政治家を入閣させようと画策する菅首相から決別する心意気 が必要だ。  ところがイラク検証議員連盟の旗を振っている斉藤つよし議員は民主党の 筆頭国対副委員長として菅政権を支えている側近の一人だ。  イラク戦争の検証を求める松本一弥記者は、その記事の中で次のような谷内 元外務次官(当時内閣官房副長官補として小泉政権のイラク戦争支持を知る 立場にあった)の言葉を、何の批判もなく垂れ流している。  「・・・日本にとって最も重要な同盟国の米国が、国際社会の反対を顧みず 武力行使に踏み切ろうとしている時、『やめておけ』という態度は取り得ない のではないか・・・」  かつての同僚のこの言葉を聞いて、怒りを通り越して悲しくなってしまう。  こんな連中たちにクビを斬られたと思うと、消えかかっていた反発心が頭を 持ち上げてくる。                               了

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