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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

新防衛計画大綱をどう評価すればいいのか
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月24日発行 第275号 ■       ===============================================================    新防衛計画大綱をどう評価すればいいのか     ===============================================================  12月17日に閣議決定された新防衛計画の大綱について、なぜその評価 を書かないのか、という質問が読者から寄せられる。  その答えをこのメルマガで書かせていただきたい。  私は「防衛計画大綱私案」という日経BP社の特集連載に、自らの安全 保障政策の考え方を書いたことがあった。  その時の約束で、特集連載の第二弾として、新防衛計画の大綱が発表され たら「新防衛計画の大綱に対する私の評価」と題して寄稿することにして いた。  そういう経緯があって、私は新防衛計画の大綱が発表された12月17日 の直後に、それを読んだ私の評価をいち早く書き上げて送付した。  因みにその評価は12月27日に日経BPオンラインで公開される予定で ある。その閲覧方法は以下にアクセスすればよいとの事だ。  http://business.nikkeibp.co.jp/   その後、様々な評者が新防衛計画の大綱について新聞、雑誌などで書いて いるのを読んで、あらためて当時書いた私の評価が正しい事を確信した。  私の評価のポイントはズバリ次の二点である。  一つは、この新防衛計画の大綱は、安保・外交オンチの菅・仙谷民主党政権 が、有識者懇談会という名を借りた官僚に丸投げして出来た作文であるという ことだ。  そうである以上、その有権解釈は官僚に独占され、その運用は官僚の裁量に 委ねられる。  だから正確な評価など誰も出来ない。  逆に言えば皆が勝手に好きな部分に着目して、好き勝手に評価すればいい、 という事だ。  実際のところ新聞の社説や評論は実に多様であり矛盾している。  憲法違反の危険なものだと批判する者もいれば、物足らないと批判する者も いる。  同じ評論家が異なった新聞で反対の事を言ったりしている。  極めつけは米国の次の二人の評論だ。  すなわちジャパンハンドのマイケルグリーンは12月19日の読売新聞で、 予算的裏づけがないのが唯一の欠点だが考え方はA評価だ、などと絶賛して いる。  その一方で、パトリック・クローニン米国安全保障センター上顧問は、12 月23日の毎日新聞で「聞こえのよい言葉並ぶ一方で具体策が足りない」と 不満を述べている。  米国専門家でさえ評価がわかれるのである。  このように、その本音がさっぱりわからない新防衛計画の大綱であるが、 一つだけはっきりしている事がある。  それは戦後一貫してわが国の防衛政策の中心にあった基盤的防衛力構想を 捨て、中国を敵視した動的防衛力という考えを導入した事だ。  今度の新防衛大綱計画の唯一と言っていい特徴がこれだ。  そして官僚たちが得意げに導入したこの考えこそ、我が国防衛政策のパンドラ の箱を開ける事になる。  これが私の評価の二つ目のポイントである。  すなわち、憲法9条と日米安保体制の矛盾を見事に包み隠して来たのが基盤 的防衛力構想であった。  それを捨てて国際情勢に応じて防衛力を自在に変えていくという動的防衛力 構想に踏み出した。  そのとたんに国論を二分する安全保障政策論争が不可避となっていくのだ。  しかし、逆説的に言えば明確な安保政策を持たない菅・仙谷民主党政権が パンドラの箱を開けてくれたおかげで、今まで封印されてきたこの国の防衛 政策に関する議論が活発化し、憲法9条と日米同盟の矛盾に国民が気づくよう になるかもしれない。  むしろ歓迎すべき新防衛計画の大綱なのかもしれない。                                  了

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