□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月21日発行 第268号 ■ =============================================================== 大林検事総長の辞任で裏金問題を封印させてはいけない =============================================================== 少し前のことであるが12月17日の各紙が、大林宏検事総長(63)が 年内にも辞任する意向を固めたというニュースを一斉に報じたことがあった。 今年6月に就任したばかりの検事総長が辞任するということは異例である。 しかも伊藤鉄男次席検事も来年早々に定年を待たずに勇退するという。 これを責任逃れだという批判をするのはやさしい。 しかし最高検のトップと次席がともに辞任するということは単なるトカゲ の尻尾きりではない。検察組織を守るために精一杯の犠牲を払ったという ことだ。 大林、伊藤両名の検察庁トップは、自らのクビと引き換えに何を守ろうと したのだろうか。 それは検察捜査の一連の不祥事の責任をとる事によって世間の手前けじめ をつけたという事だ。人事を一新して検察の再出発を誓う、ということだ。 少なくともそういう事と受け止められている。 報道によれば大林検事総長に人事は、年の瀬もおしせまった12月27日 の閣議で了承され辞任するという。その時の記者会見で大林氏の口から、 その事が語られるに違いない。 しかし、それで終わらせてはいけない。 おりしも大林検事総長の後任人事が内定したと報じる12月18日の新聞に、 千葉県の巡査部長が捜査費を着服して不倫女性と飲食していたという事件が 報じられた。 これを取り上げた「朝ズバッ」にゲスト出演していた「みんなの党」の 浅尾慶一郎議員が、「これは氷山の一角かもしれない」と言ってみのもんた を苦笑させていた。 警察の裏金問題は、仙波敏郎巡査部長の告発でもはや国民の間では周知の 事実となっている。 同様に検察庁の裏金もまた三井環元大阪高検公安部長の告発で明らかに なった。 大林検事総長が自分の首と引き換えに検察の裏金の追及を封印する取引を したのではないか。 それを許してはいけない。 12月27日に予定される辞任の記者会見の場で、その事を質問する記者が あらわれなくてはいけない。 辞任をするなら裏金問題を明らかにした上で辞任すべきではないか、と 国民に代わって正面から問い詰める記者があらわれなくてはいけない。 そして最高裁の裏金問題である。 12月10日の日刊ゲンダイに次のような記事があった。 12月10日に東京地裁で最高裁判所の裏金疑惑問題に関する判決がでる という。 最高裁は裁判官の給与をまとめて要求するが、最高裁の意向に沿わない 裁判官は昇給させずに、余った給与予算を裏金にしている、という。 この最高裁の犯罪を明らかにしようとして、大阪高等裁判所の判事まで つとめた生田暉雄氏(69)が会計検査院に対し行政文書の開示を今年7月 に請求したという。 しかし、不開示決定が出たことから、生田氏は処分取り消しを求めて提訴 したという。その判決が東京地裁で出るというのだ。 もう10日以上も経っている。果たして12月10日に判決がでたのだろう か。出たとしてその判決はどのような内容だったのか。 これほど重要な訴訟であるのに、それを報じる記事を私は読んだ記憶はない。 12月10日に出るという判決結果を報じる新聞はなかった。 私は見落としているのかもしれない。もし読者の中に知っている方がおられ たら是非とも情報提供願いたい。 あらゆる問題は裁判によって最終決着される。それが法治国家の決まりだ。 そして裁判の最終判断は最高裁によって決まる。最高裁はすべての裁判官の 判決に影響力を有している。最高裁の権限は限りなく大きい。 その最高裁にも裏金があるとすればどうだろう。この国に正義はないという 事になる。 日刊ゲンダイはその記事を次のような言葉で締めくくっている。 「検察だけでなく、最高裁まで『裏金』に手を染めていたとすれば驚愕だ。 この国の司法は本当に信頼できるのか。こんな重大な問題を見過ごしている 司法ベッタリの大新聞、テレビの責任は重すぎる」 これに反論できる者がいるというのか。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)