□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月19日発行 第266号 ■ =============================================================== 隠され続ける普天間基地問題の本質 =============================================================== 辺野古移転がベターなのか(菅首相)、バッドなのか(仲井真知事)、 ワーストなのか(福島社民党党首)、そんな言葉遊びでうつつを抜かして いる場合では決してない。 もはや米国側の都合でグアム移転が遠のいたにも関わらず、グアム移転を 決めた日米合意の見直しがなぜ日米双方の関係者の口から出てこないのか、 ということだ。 もしグアム移転の道が遠のいたとすれば、それに変わる対応策を論じる 意見がなぜ出てこないのか、ということだ。 それよりも何よりも、普天間基地が当面沖縄に残ることになったのに、 なぜ辺野古沖への新しい飛行場の建設ばかりが強調され、日米政府関係者が その建設を急ごうとするのか、ということである。 パッケージ合意と言い出したのは米国ではなかったのか。 12月19日の東京新聞に、一段の小さな記事であったが、普天間問題の 本質に決定的に重要な意味を持つ記事が書かれていた。 すなわち米下院本会議で17日、在沖縄海兵隊のグアム移転事業費を約7割 削減する予算法案が圧倒的多数で可決されたという。 その記事によれば近く上院でも同様の法案が可決する見通しであるという。 東京新聞は、「これで沖縄の負担軽減策の目玉である海兵隊移転が06年の 日米合意で定めた14年より遅れること(が・・・)確定した」、とまで断じ ている。 しかし、問題はそれにとどまらない。 東京新聞は06年の日米合意の遅れが確定したとしか書かなかったが、実は この米国議会の決定は、06年の合意を踏襲した今年5月28日のあの日米 合意が米国側の都合で一方的に見直さざるを得なくなったという事でもある。 このような重要な米国内の動きを、なぜ日本のメディアは大きく書かないのか。 なぜ国民に知らせようとしないのか。 なによりも、なぜ菅首相は今でも辺野古移転がベターだと言い張って沖縄に 理解を求めようとするのか。 米国の財政事情が急に改善するとは思えない。日本が米国予算の肩代わりを 行なわない限り海兵隊のグアム移転はない。 米国が沖縄海兵隊を本国へ帰還させるか、もしくは日本政府が沖縄以外の国内 に移設場所を見つけない限り普天間基地は無くならない。 そして、それはこれまで散々議論してきた経緯から考えればまず有り得ない。 それにも関わらず、米国はなぜ日米合意の見直しを言い出さず、辺野古への 代替施設移設にこだわるのか。 なぜ菅首相はそのような米国の要求を最重要視して応じようとするのか。 そう思っていたら私のメルマガの読者の一人から次のような投稿が寄せられた。 その投稿は太田昌秀元沖縄県知事の著書「沖縄の未来」(芙蓉書房)を引用 して、辺野古へ作られようとしている辺野古新基地の概要を語っている。 建設期間は10〜15年で費用が一兆五千億円、空母35隻分、関西空港並 の規模というのが米国の構想で、年間維持費が2億ドルという国防総省の試算、 米会計検査院の最終報告では運用年数40年、耐用年数、何と200年という 見積もりがある。一体日本は米軍にいくら貢がねばならないのか、ここまで 日本は米国にしゃぶりつくされていいのか、という内容である。 私は太田昌秀氏のその著書を読んだ訳ではないし、この投稿者の書いている 事が真実かどうかを検証できる情報は今は持ち合わせていない。 しかし辺野古新基地が、早晩どこかへ移転するはずの海兵隊のために作られる 物でない事は、誰が考えても明らかである。 今こそ普天間問題の本質を議論しなければならない。 在沖縄海兵隊は何時、どこへ移転する事が想定されているのか。 海兵隊が移転するのになぜ辺野古に巨大な代替施設が必要なのか。 それをなぜ日本が負担しなければならないのか。 普天間基地の県外、国外移転を主張する与野党の政治家たちは、問題の本質 を国会で追及し、国民の前に明らかにしなければならない。 そうすればおのずから普天間問題の欺瞞が明らかになる。 無知な国民も真実に気付く。 正しい答えが簡単に見つかる事になる。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)