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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

大手メディアの正体を露呈した朝日、読売新聞の社説
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月16日発行 第262号 ■       ===============================================================    大手メディアの正体を露呈した朝日、読売新聞の社説     ===============================================================  大手メディアは権力者の味方ではあっても、決して本気で弱者の立場に 立って記事を書くことはない。  その最大の理由は、大手メディアに身を置く者たちが、一般の国民と比べ はるかに高給をもらっているからだ。恵まれた立場にあるからだ。  有名司会者や出演する評論家たちの高額所得については言うまでもない。  たとえ弱者の立場に立って発言しているように見えるいわゆるリベラル 評論家でさえも、である。  大手メディアが権力者の側に立って高説を垂れる。それを見事に表したの が12月15日の朝日新聞と読売新聞の社説である。  奇しくも二大ライバル紙が同じ日の社説で、異なったテーマで権力側の立場 で物を言っている。今のメディアを見事に象徴している。  「負担を分かち合う時代」という朝日新聞の社説は、来年度の公的年金の 支給額が5年ぶりに引き下げられる事になった決定を、やむを得ないと断じた。  その理由はこうだ。  「これ以上将来の世代に負担を強いるのは世代間の不公平を更に悪化させる。 年金制度を崩壊させないためには増税か保険料の引き上げしかない。それを 避けるために高齢者には年金の減額を甘受してもらわなければならない。負担 は皆で分かち合う時代なのだ」、と。  とんでもない社説だ。  そもそも年金制度の破綻は、「年金を支給するのは40年以上も先の事だ から国民から巻き上げたカネは当分は勝手に使っても構わない」とうそぶいた 官僚がつくり、食い物にしてきたから破綻したのだ。  おまけに官僚たちはその時の政治に迎合して、年金制度をどんどんと複雑に して行き、結果として国民間に大きな不公正をもたらす制度にしてしまった。  是正すべきはまずそのような年金制度の簡素化、透明化、抜本的改革だ。  それを行なわずして、高齢者の支給を一律に減らせという。  裕福な高齢者はいいかもしれない。しかし多くの高齢者は年金が唯一の生活 の糧である。  それを一律に減額して若者の年金支給を確保せよという論説は、権力者の 怠慢を棚にあげて、いたずらに国民を分断する悪意ある論説だ。  老いも若きも、生涯にわたって収め続けた年金保険を、退職後に確実に支給 してもらう、そしてその支給額は憲法で保障される人間らしい生き方に見合っ た額となる。そういう年金制度がなぜつくれないのか。  朝日の社説が書くべきはその事だ。  もう一つの読売の社説は「高所得層狙い撃ちは筋が違う」と題してこう書い ている。  「2011年税制改革大綱案の『増税』の対象は、高所得者に集中している。 これは公平性を欠くだけでなく、人々の働く意欲や経済の活力を失わせると 言わざるを得ない。富裕層に負担増を求めるだけの税制改革では、日本経済を 支える優秀で高収入の人材が税金の安い海外に流出する、といったマイナスの 効果を生む恐れがある。公平な税負担を実現するためにも、消費税率引き上げ などに早急に取り組むべきであろう」、と。  これもとんでもない議論だ。  今度の税制改革案が大企業、富裕層に甘く、低所得者層に厳しいものである ことはすでに多くの新聞が書いていることだ。  平均年収がどんどん低下しつつある現状において、明らかに低所得者や中小 企業に不利な消費税を引き上げろと唱える読売新聞の社説は、生活に苦しむ 多くの国民の側に立った考えでは決してない。  大手メディアは、権力批判をするというジャーナリズムの仮面を被った 御用広報紙であり御用放送局に成り果てた。  最近の報道を見てつくづくそう思う。                         了

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