□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月15日発行 第260号 ■ =============================================================== 船橋洋一朝日新聞主筆の退任と駐米大使人事の行方 =============================================================== 今日(12月15日)の報道で私がもっとも注目したのは朝日新聞だけが 書いていた「船橋洋一主筆が退任する」という記事である。 これは朝日の社内人事であるから、朝日しか書かないのは当然であるかも しれない。 一段の小さな記事で次のように書かれていた。 「朝日新聞社の船橋洋一主筆が15日付で退任した。2007年6月、 朝日新聞社が約30年ぶりに設けた主筆に就任し、「日本@世界」の連載や、 昭和報道検証、朝日地球環境フォーラムなどを通じて、紙面の質の維持・向上 につとめた」 これが朝日の記事の全文である。 しかし舟橋洋一氏の退任記事の持つ意味は、これだけにとどまらない。 舟橋氏は次期駐米大使の有力な候補者の一人と取りざたされてきた。 果たして、この記事はその布石なのか、という事だ。 来年には主要国の大使が何人か交代する。 今朝の新聞には、来年早々にも駐英大使に林景一内閣官房副長官補が転出 することが内定したという記事があった。 斉木昭隆アジア大洋州局長も、駐インドネシア大使に転出すると報じられて 久しい。 いずれも駐米大使である藤崎一郎氏の5年から7年後輩だ。 藤崎一郎駐米大使が、とっくの昔に任期を終えているのに、いまだに駐米 大使を続けているのは、ひとえに後任人事が決まらないからだ。 駐中国大使に丹羽伊藤忠商事会長が政治任命された理由の一つに、もはや 駐中国大使にふさわしい候補者が外務官僚には見つからなかったという理由 が指摘されたことがあった。 それは事実である。そしてそれはまた次期駐米大使にもあてはまるのだ。 これまで外務官僚が独占してきた駐米大使のポストに、衆目が一致する外務 官僚が見当たらないのである。 さりとて駐米大使を政治任命する事も容易ではない。 駐米大使は駐中国大使以上に政治的な役割が求められる。 日米関係は、もちろんビジネスだけではつとまらない。 その影響力が大きいゆえにまた、ライバル意識も出てくる。財界からの登用 であればなおさらだ。 さりとて総理経験者などの政治家からの登用となると、これまた人材がいない。 駐米大使を見事に努められる能力のある政治家は見当たらない。 船橋氏が有力候補の一人として名前が挙がる理由はそこにある。 しかし船橋氏にも大きな問題がある。 それは、彼があまりにも米国寄りだからだ。 CIAの手先ではないかとさえ言われるぐらいだ。 そんな人物を駐米大使にすることは菅政権にとっても米国にとっても かえってやりにくいだろう。 来春にも予定されている菅首相の訪米までは、おそらく藤崎駐米大使の 交代はないだろう。 しかしそれが終わった後は、もはや藤崎大使が駐米大使を続ける理由は どこにもない。 どんなに人選が困難でも駐米大使の人事は進めなければならない。 しかも米国の受け入れ了解を取りつける時間を考えれば、もはや今の時点で その候補者は絞られているはずだ。 果たし前原外相は誰を選ぶのか。 船橋洋一氏の朝日新聞主筆退任の記事は、いやがおうでも次期駐米大使人事 と関連して読まざるを得ないのである。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)