□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月14日発行 第259号 ■ =============================================================== 思いやり予算日米合意の欺瞞 =============================================================== どんなに菅政権が迷走しても予算編成は行なわなくてはならない。 子供手当ても法人税減税も、どんなに議論がまとまらなくても、いつかは 強引に決着させなければならない。 思いやり予算もその一つだ。まもなく新聞で一斉に報じられる事になる。 その前にどうしても書いておかなくてはならない。 今日の新聞にはまだどこも書いていないが、早朝のテレビで次のような 趣旨の事をアナウンサーが読み上げていた。 前年並みの予算で合意した。足らない部分は防衛省予算の施設整備費で 負担することが決まった、と。 この意味を果たして何人の視聴者が理解しただろう。 これは思いやり予算の据え置きどころか増額である。 周知のように思いやり予算の規模をどうするかは日米両国の官僚の間で 難交渉が続けられていた。 財政赤字解消のためにあらゆる予算が仕分けされてきた。 本来ならば思いやり予算も減額したいところだ。民主党政権はそう言って 来た。 ところが米側は増額しろと言って譲らない。何しろ米国の財政はもっと火 の車だ。だから日本側に負担を押し付けなければならない。 対米従属の菅政権にそれを跳ね返す力はない。思いやり予算を仕分けできず に前年並みを認めざるをえない。 ここまではすでに報道されている。国民も仕方がないとあきらめている。 ところが米側は増額を譲らない。前年並みでは了承しないのだ。 しかしいくら何でも、国民の手前、思いやり予算を増額することはできない。 自民党でもしなかった増額をやってしまえば民主党政権は何だ、ということ になる。 そこで考えついたのが防衛省の予算の流用である。 米軍基地の維持の為に日本が負担する予算は、なにも思いやり予算という 予算費目の予算に限られない。 数々の基地対策費がある。 極端に言えば防衛省の予算のあらゆる項目が米国への軍事協力費である。 だから思いやり予算を据え置いても、あるいは減額しても、その他の流用 可能な予算項目から補填すればいいだけの話だ。 予算項目間の相互移動は国民の目には一切見えない。 財務省が了承すれば「いいだけの話だ。財務省もまた米国には逆らえない のである。 財務省として追加財源を必要としなければ、すなわち防衛省の予算の範囲内 でやりくりすれば、目を瞑るのである。 かくして思いやり予算は米国の要求通り実質的に増額される事になる。 間もなく発表される思いやり予算の最終的な姿について、はたしてどれだけの 新聞各紙が、米国のゴリ押しに負けて増額を飲まされたと書くのだろうか。 私は今からそれに注目している。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)