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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

知っていても書かない、話さない大手メディア  
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月12日発行 第254号 ■       ===============================================================    知っていても書かない、話さない大手メディア       ===============================================================   すこし前の記事になるが、12月6日の毎日新聞が一面トップで仙谷 官房長官が在日中国大使館公使に対し、拘留されていた中国漁船の船長 釈放を事前に知らせていた、とスクープした事があった。  その記事によれば、政府の説明と反して、船長釈放は、実際は周到に 仕組まれた政治判断だったという。  これが事実ならば大問題だ。  私は今でも当時の国会における政府答弁を覚えているが菅首相や仙谷 官房長官はウソをついていたのだ。国民を欺いていたのだ。  しかし、私がこのメルマガで言いたいことはその事ではない。  そのスクープを報じる6日早朝のTBSの「みのもんたの朝ズバッ」で、 みのもんたが騒いでいた。「これは大きな問題ですね」、と。  それに対して、その時相槌を求められた杉尾秀哉というレギュラー解説 委員がすました顔でこう言い放ったのだ。  「これは皆知っていた事なんです。毎日は少し詳しく関係者に確かめて 書いたということでしょう」、と。  1974年に月刊文芸春秋において立花隆が「田中角栄研究―その金脈と 人脈」を書いた時のメディアの反応もまったく同じであった。  世間に大きな衝撃を与え、後の田中角栄の失脚につながったこの立花隆 の記事に対し、あの時もメディアは、こんな事は我々は皆知っていることだ、 とうそぶいた。  知っているならなぜ書かなかったのか。  今も昔もメディアは知っていても書かない、言わない事がある。  海老蔵殴打男がようやく逮捕された。  事件が起きたのが11月25日未明。逮捕状が出たのが11月29日。  身元はとうにわかっているのに、殴打男の交友関係者たちが次々と証言 しているのに、なぜ逮捕がこんなに遅れたのか。  今頃になって新聞が書き始めた。  「週刊朝日12月17日号が『海老蔵の示談交渉に暴力団』とスクープ。 これは見逃せない。海老蔵を殴った相手をかくまっているのは広域暴力団 傘下の有力組織の構成員で、新宿を根城にしている男だという。その男の 話。本人たちは、『もう出てもいいし、出るならすべてをぶちまける』と 言っており、『それが表に出たら、相当なことになりますよ。海老蔵なんて 吹っ飛んじゃいます。歌舞伎どころじゃないですよ』・・・」(12月11日 産経新聞 花田紀凱(かずよし)の週刊誌ウオッチング)。  表に出たら相当な事になるというのは何か。政界・財界の要人の醜聞が 明るみになるという事か。  それを恐れるこの国の指導者たちがいるのか。その配慮があって警察の 動きが不自然なのか。  これもまた、メディアは知っているけれど書かない、言わない、という ことなのだろうか。  私が海老蔵問題の当初から違和感を持って報道を眺めてきた理由はここに ある。  海老蔵に同情するつもりは毛頭ない。海老蔵の酒癖、女癖の悪さや傲慢さ などには興味はない。我々の生活にとっては大した問題ではない。  問題は我々の知らないところでこの国の支配層と闇の世界がつながって いるのではないか、という疑惑だ。  もしそれが事実なら善良な市民はうかばれない。犠牲になっても泣き寝入り させられる。  それを知っていながらメディアが書かない、言わないとすれば問題である。  一事が万事だ。メディアが本当の事を書かないとすれば国民は何も知らない ままに間違った判断をさせられ続けるということだ。  メディアが報じる事を鵜呑みにするな、ということだ。                                                                                 了

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