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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

 護憲政治家河野洋平の勇気とその限界
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月11日発行第252号 ■       ===============================================================    護憲政治家河野洋平の勇気とその限界     ===============================================================  いまや最強の護憲派となった私にとって、急速な勢いで進んでいるこの国 の総右傾化ほど気がかりな事はない。  北朝鮮の砲撃事件が大事に至らずにひとまず収束した。それはすべての国 や国民にとって歓迎さるべき事である。  しかし、その後のメディアの報道振りは、それを喜ぶどころか、北朝鮮の さらなる脅威を煽りたて、それを制止できない中国の責任をなじり、日米韓 の軍事演習ばかりを報じる。  かつてその社主がCIAの手先であったという恥部を引きずる読売グループ が、日本を軍事占領し続け、日本の全土に在日米軍を維持し続けたい米国の 片棒を担ぐ事は、わかる。  しかし公共放送であるNHKまでもが、大越健介という米国の代弁者の如き 記者を9時のニュースシウオッチナインのキャスターに据えて、連日中国封じ 込めの必要性を訴え続けるのは、明らかに異常だ。  ここにきて急速に強まったこれらのメディアの攻勢の裏には、まもなく 管政権の手で閣議決定される新防衛計画大綱の環境づくりの意図がある、と 私には思えてくるのだ。  統治能力を失って久しい菅政権がここまで持っているのは、まさしくこの 防衛計画の大綱を作らされるために違いない。その後は捨てられる。  この新防衛計画こそ日本の戦後史における護憲運動に止めを刺す最悪の憲法 9条違反の防衛計画であるのだ。  かくも危機的状況なのになぜ護憲派政治家は行動を起こそうとしないのか。  そう思っていたら、河野太郎前衆院議長が12月10日の朝日新聞紙上で 新防衛計画に対する危惧を訴えていた。  基盤的防衛力を手放すな、と。  34年前(1976年)三木内閣のときに打ち出され、三木内閣が閣議決定 した防衛計画大綱に盛り込まれたこの基盤的防衛力構想こそ、防衛力を平和的 憲法の国にふさわしい水準にとどめるものであった、と。  このとき同時に採用された「防衛費の対GNP(国民総生産)1%枠」、 「武器禁輸原則の適用拡大」、とともに、アジア地域の平和と安定に貢献して きたのだ、と。  イランの核疑惑問題や旧ソ連諸国の紛争を身近に抱える独・英でさえ(筆者 註:米国も仏も基本的には同じ方向にある)財政赤字削減のため兵力削減を 打ち出しているのに、なぜ日本で赤字削減を声高に求める人から防衛費削減の 声が聞こえてこないのか、と。  これほど重要な新防衛計画の大綱づくりを私的懇談会の議論に委ね、その 報告書をベースに日本の防衛計画をつくろうとしている。これは間違いだ。 防衛計画の見直しは凍結し、国会で徹底した議論を行なうべきだ、と。  この主張は正論である。  宇都宮篤馬の後を引き継いだ護憲政治家の面目躍如である。  しかし河野洋平が今なすべき事は、もはや読売新聞と同様に米国の代弁者に 成り下がった朝日新聞に投稿してガス抜きの役割に貢献するのではなく、国会 の場でそれを堂々と発言し、行動を起こす事である。  これほどの政治経歴を積んだ政治家である。もはや彼には失うものはないも ないはずだ。河野洋平は、平和国家日本を唱えてその意志を果たせなく死んで いった護憲政治家のためにも、いまこそ国会の場で行動を起こすべきだ。  衰退の一途を辿るこの国の護憲政治家を束ねて立ち上がるべきだ。  いまここで行動することなく死んでいくのなら、右翼に「腰抜け政治家」呼ば わりされ続けてきた河野洋平は、その通りで終わってしまう。  それでいいのだろうか。                             了

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