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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

ウィキリークスが暴露したサウジアラビア王国の腐敗
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月11日発行第251号 ■       ===============================================================    ウィキリークスが暴露したサウジアラビア王国の腐敗     ===============================================================  当然のことながらウィキリークスによって公開された機密情報は、その 情報に関与する度合いによって衝撃度が異なる。  その情報の持つ意味をどこまで知っているかによって、その衝撃の理解度 が異なる。  中東情勢に関心のある私は、そしてサウジアラビアに勤務したことのある 私は、米国公電が明らかにしたサウジアラビアがらみの次の情報を強い関心 を持って読んだ。  一つは08年のレバノンの内戦時にとったサウジアラビアのサウド外相の 行動である。  レバノンのシーア派武装組織(イランの影響を受けている反政府組織) ヒズボラにレバノンが乗っ取られないように(内戦の勝利者にならないように) アラブ諸国の軍隊と国連平和維持軍をレバノンに派遣してほしい、と米国に 要請したという。  結果的には米国がそれに慎重な姿勢を見せたためサウド外相の行動はなかった 事として闇に葬られたが、いま米国の公電によって明らかにされた。  サウジアラビというアラブの一国が、米国の手を借りて同じ同胞のアラブの 国レバノンに内政干渉する。  しかも、レバノンを反米国家、反イスラエル国家にさせないように米国の力 を借りようとした。  この事はアラブにおけるサウジアラビア王国の面目を潰すことになる。反米 のアラブ諸国の国民たちにとっては裏切りに映る。  この米国の公電の暴露により、イスラム原理主義者や反米、反イスラエル 抵抗組織がサウジアラビア王国を敵視する危険性は更に高まった。  しかしもっと深刻な事が明るみになった。  イスラム教の戒律が最も厳しいとされているワッハーブ宗派のサウジアラビア 王国において、米国総領事館内でサウジアラビアの王族達が酒宴、買春を 行なっていたということが明らかにされたのだ。  私は1980年から1982年にかけてサウジアラビアに勤務した経験が ある。  その時、サウジアラビアの王族が、いかにイスラム教の教えに背いて非道徳な 生活をしているかを見聞きしてきた。それに強い反発を感じた。  私でさえ反発心を抱くのだ。イスラム教に殉じる者たちの怒りは想像できる。  イスラムの戒律を冒せば鞭打ち、投石の刑に処せられるサウジアラビアの 国民や、世界の敬虔なイスラム国家の国民は、そんなサウジアラビアの王族の 行為を許せないと思うだろう。  ただでさえサウジアラビア国内の原理主義者からクーデターを起こされそうな サウジアラビアである。  ただでさえパレスチナ問題で米国、イスラエル寄りであると非難されるサウジ アラビアである。  米国に王政を守ってもらい、その石油収入を米国と山分けしているサウジアラ ビアの王族たち。  その王族たちがここまで腐敗している事が明らかになったのだ。しかもよりに よって米国公館の中で。  サウジアラビアに革命が起こりイランのような反米政権が出来れば中東情勢は 一気に不安定化する。短期的には混乱と流血を招く。  その混乱から不利益を受ける者たちは、だからウィキリークスは害悪だと決め つけるだろう。  しかしサウジアラビアの政変は、解決のめどが立たないまま犠牲だけを強いら れるパレスチナ人たちにとっては、歓迎すべき事に違いない。  サウジアラビアこそエジプトと並んで米国に追従して同胞のパレスチナを裏切り 続けてきた国であるからだ。  サウジアラビアの政変が中東のパワーバランスを大きく変え、不可能と思われ てきたパレスチナ問題の解決に一条の光を注ぐ事になるかもしれない。  ウィキリークスの功罪については、これからも正反対の意見が対立したまま 議論が続くだろう。  ウィキリークスによって明らかにされる情報とその情報が及ぼす影響の真の 評価は、歴史が下す事になるのかも知れない。                             了

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