□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月9日発行第246号 ■ =============================================================== 「日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構」書評(1) =============================================================== 政局が急に動着出した。もうとまらない。 戦後のわが国の政治史において最大で最悪の大混乱が、内外情勢が最悪の 中で、始まる事になる。 どうせ混乱するのであれば徹底して混乱し、その中で今度こそ本物の政界 再編が起きてもらいたいと思っているが読者のみなさんはどうお考えか。 これからの政局の動きについては折に触れて書いていきたいが、それと並行 して、お約束通り、ある本の書評を連載で書いていきたい。 その書評はとりも直さずこれから起きるであろう政界再編の軸になるテーマ となるからだ。 本の名は「日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構」(新評論)である。 著者は中野憲志という人物である。 およそ面識のない著者がこの11月に世に出したこの本ほど、日米同盟や 日米安保についての私の考えを見事に代弁してくれる本はない。 その著の中で中野氏が強調する点は私が強調することばかりだ。 中野氏も私も、今すぐに日米安保や日米同盟をなくせと言っているわけでは ない。 国民の多くは今の時点ではその事を望んでいないことも知っている。 しかし、日米安保や日米同盟はいずれなくしていかなければならない。そう であればその目標に向かって、政治は努力しなければならない。それに国民が気 づき、いかなる政党が政権を取ろうとも、国民の多数意見で政府にそれを行なわ せる、これである。 国民が日米安保や日米同盟を変えていくようにならないと、この不可能に 近い大業は実現できないであろうという認識である。 こう前置きをした上で中野氏の主張の主要点を彼の言葉で語ってもらうこと とする。 初回の論点は、日米安保体制は米国政府と日本政府の政府間の協議で終わらせ る事は不可能である、という厳然とした事実である。 すなわち米国政府は次の理由から決して日米安保を終わらせようとはしない。 「米国にとって安保は、自国の国家戦略の変化に応じて自由に使える国外最大 の基地(在日米軍)と、自国の自然環境を破壊することなく軍事演習のできる 広大な土地が保障され、しかもそのための費用が日本との折半で賄われるという、 願ったり叶ったりの『安全保障条約』である。米国側から安保を終了し、米軍を 撤退させるという論理は出てきようがない。安保をめぐるあらゆる議論は、この 冷厳たる事実を認めたところから出発しなければならない・・・」(249頁)。 そして日本政府側からもまた決して安保解消の政策は出てこない現実を中野氏 はこう指摘する。 「現状では、既成政党にその(安保条約をあらかじめ期限を設定し、その期限 が過ぎたら消滅させるという)イニシアティブを期待することには無理がある。 社共以外のすべての政党が日米同盟・安保堅持を掲げており、その社共両党に しても安保の期限化をマニフェストに掲げ『国民運動』を組織するような気配は 今のところ見られない・・・」(303頁)、と。 すなわち日米安保や日米同盟は、国民の多数がその気にならないと無くなら ないのである。 「日米同盟の欺瞞」、や「日米安保の虚構」に国民が気づき、それをいつかは なくさなければならないと行動を取るようにならなければ物事は動かない、と いうことである。 了
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