□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月8日発行第245号 ■ =============================================================== 海老蔵事件をめぐる報道に見るこの国の病理 =============================================================== 私はメルマガと並行してブログで不特定多数の読者に発信し続けている。 そこでは、あえて刺激的な表現を使って私の考えをぶつけている。反応を 見たいからだ。自分の正しさを確認したいからだ。 当然の事ながらブログの読者は得体の知れない者が混じっている。だから そこからの反応も読むに耐えない誹謗や攻撃がある。 しかし私はそれさえもメルマガを書く際の参考にしている。 なぜならばそこにはこの国の本当の姿が現れていると思うからだ。 考えられないような思想を持つ者たちもまたこの国の国民であるという事を 受け入れる抵抗力を養うためだ。 海老蔵事件についての反応もそのひとつである。 海老蔵事件の報道の推移を、私は興味を持って見守っている。 なぜならばそこにはこの国の政治報道に通じる意図的な世論操作があるような 気がしてならないからだ。 ある時点から、海老蔵を殴打した者よりも、海老蔵の傲慢さを批判する報道 が目立つようになった。 その絶頂が12月7日に行われた海老蔵の記者会見で海老蔵に浴びせかけ られた記者達の質問だ。 あたかも被害者の海老蔵が悪いかのような質問ばかりだ。 いくら海老蔵が自らの非を詫び、死の恐怖を感じるほどの暴力を受けたと 繰り返しても、悪いのはお前だったのではないか、という質問ばかりが浴びせ かけられた。 その記者会見を報じる翌日のテレビもその事ばかりが強調されていた。 あたかも殴打男を非難したり、なぜ殴打男を捕まえて同じく証言させないのか、 という事がタブーの如くだ。 これと同じ光景をどこかで見たと思ってすぐ思い出した。 民主党代表選の初日に行なわれたあの共同記者会見であった。あの時の小沢 一郎が海老蔵役だ。 おかしいと思わないか。 たとえいくら海老蔵の日ごろの素行が悪かったとしても、そして傲慢、増長 していたとしても、人を死の恐怖に追いやるほどの暴力を振るうほうが悪いに 決まっている。 ところが殴打した男が、逮捕状も出ているというのに、いまだに行方がわから ないという。 警察関係者さえ、それはありえないと言っているのにである。 その一方で殴打した男の関係者ばかりがやたらにメディアに出て来て海老蔵の 悪事ばかりを言いふらす。メディアはそればかりを繰り返す。 これでは何も知らない国民は海老蔵が悪いと思ってしまう。 大手メディアの報道とは正反対に、ネット情報やインサイダー情報では殴打男 の札付きの悪行やその背後関係にある政界・財界・芸能界・暴力団などのつな がりが盛んに指摘されている。押尾事件や朝青龍事件と同じ人脈につながって いるという。警察やメディアはすべてを知っていると言われている。 なぜその事が大手メディアで公然と書かれないのか。書けないのか。 この国はいつから凶悪な暴力行為に鈍感になってしまったのか。 不正義に対する憤りを忘れるようになってしまったのか。 それは取りも直さずこの国の平和外交の重要性に対する無神経さ、無関心さ の高まりにもつながっているような気がする。 そしてその背景には、この国の国民の生活困窮と、それに伴う心の余裕の喪失、 自分を守る為に他者を傷つけて平然とする風潮の高まりがあると思う。 その最大の理由はやはり長く続くこの国の政治の劣化ではないか。 政治家が自らの生き残りに汲々とし、この国を正しく運営できなくなったと いうことではないか。 この国の病理は深刻であると思う。 了
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