□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年12月5日発行第240号 ■ =============================================================== 北方領土問題を早期に解決すると豪語した前原外相 =============================================================== 前原誠司という政治家がまた無責任な豪語をしたなと思った。 北方領土を空から眺めた後に根室の元島民たちを前にしてこう語った という。 「65年かかってまだ解決しない問題を、あまりだらだら長くやっていても いかがなものか」と(11月5日各紙)。 この発言をした前原外相は、今の外務省をどう率いて北方領土問題を解決 するつもりなのだろうか。 私は情報誌「選択」12月号に掲載されていた「対露関係にとどめを刺した 河野雅治駐露大使」、という記事を思い出しながらそう思った。 「選択」は「罪深きはこの官僚」という連載コラムを持っていて、毎回 主要な官僚を名指しして、いかにその官僚の仕事ぶりが国益を損ねているかを 書いている。 かなりの事情通が書いていると見えてその官僚評価は正確だ。 そして今回の河野駐露大使にまつわるその記事の要旨はこうである。 「・・・メドベージェフ露大統領の国後島訪問を受け、官邸は駐露大使 である河野雅治を日本に帰国させた。表向きは「ロシアへの抗議」とも言わ れた今回の一時帰国は、実は外交上の対抗措置などではなく、本当の「事情 聴取」だった。大使館から適切な情報が上がってこず、大使本人を帰国させた というのが実情だ・・・ 駐露日本大使館はマスコミで流布されている『メドベージェフが北方領土を 訪問する』という公開情報を一歩たりとも出る情報しか持たず、しかも呆れる 事に、『大統領が訪問する可能性は小さい』という誤った分析報告までして いた。 帰国後の『事情聴取』でも、河野大使は『今回の国後訪問はロシアの内政 問題である』という評論家程度の分析を繰り返すばかりだった。 それは取りも直さずモスクワの日本大使館の機能不全を示している。大学院 生レベルの専門調査員と呼ばれる非正規職員にロシア内政を分析させているが やっていることは新聞の切り抜き。ロシアに見識がありロシア語の堪能な 外交官は殆どいない。 ロシア外交はクレムリンでつくられ、ロシア外務省はその実施機関でしか ないのに、日本大使館はクレムリンにパイプはなくロシア外務省だけとしか 接触していない。 ロシアンスクールは鈴木宗男事件以降解体したも同然で、みな自分の保身 ばかり考えて『外務省内で北方領土に熱意を持つ者がいなくなり、事実上 北方問題は外務省内でも無関心』となっている(日本の外交にも詳しいロシア 専門家)。 それでもクレムリンは『日本には策があるのではないか』と考えていたが 今回の一件を見て『日本はもう相手にする必要すらない』(クレムリン筋)と 完全に見切ってしまった。対露関係にとどめを刺した河野大使の罪は 重すぎる・・・」 私が外務省を離れて7年余が経つ。 私の知っている外務省と駐露日本大使館の実情はこの通りだ。 過去7年間の外務省を眺めてきて、外務省は、更に劣化した事はあっても、 機能強化が図られた形跡はまったくない。 前原外相はこのような外務省を率いて、どのようにして北方領土問題を急速に 前進させるつもりだろうか。 とても本気でそう言っているとは思えない。 了
新しいコメントを追加