□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年11月30日発行第233号 ■ =============================================================== 外交文書の公開について(続編) =============================================================== 今朝(11月30日)配信したメルマガ第231号で外交文書公開の報道が 変わったと書いたばかりだった。 あのメルマガは前夜に書き留めたものを予約配信したものだ。 そうしたら今朝の朝刊で各紙が一斉に、わが国が核保有を検討していた事 を示す外交文書の公開について大きく報じた。 この報道を見て、これからの外交文書の公開に関しさらに二つの事を指摘 しておきたい。 一つは11月26日に外交文書を公開したばかりの外務省が、なぜそれから わずか3日後の11月29日に、核保有関連の外交文書に限って追加公開を行 なったのか、という素朴な疑問である。 公開漏れだったのか。あるいはこれからの外交文書の公開は準備が整い次第 次々とその都度公開していくということなのか。 その場合、外交文書の公開の背景に政府側のなんらかの作為が含まれること にならないか。 疑問はいくつも浮かぶ。 非核三原則を打ち出した佐藤政権が、その裏で核武装の可能性を検討して いたという史実は、すでにNHKの調査報道で明らかにされていた。 だからそれを知っている者にとっては驚きではない。 しかし、そのような事を知らない一般国民のほうが圧倒的に多いだろう。 そのような一般国民にとっては、この外交文書の公開は驚きを持って受け 止められるに違いない。 非核三原則の緩和が菅民主党政権の既定方針として報じられている中で、 そして12月中にも菅政権の手であらたな防衛政策の方針が決められようと している中で、国民の核アレルギーを取り除こうとする思惑があるのだろうか。 その思惑にメディアが加担させられようとしているのだろうか。 もう一つは、今回のように文書を特定して公表する場合は、各紙が一斉に 大きく取り上げる事になる、という事だ。 外交文書は一度にまとめて大量の文書が公開されるよりも、重要な外交案件 ごとに順次関連文書が公開されるほうが、報道するほうも記事にしやすい。 そのほうがまた読者も理解しやすい。 その一方で、外交文書を公開するタイミングを自由に選べる政府にとっては、 その公開を利用する余地が出てくる。 いずれにしても外交文書の公開がどんどんと進んでいく事は歓迎すべきだ。 その一方で。これからの外交文書の公開については、公開する政府と、その 公開文書を記事にするメディアの双方に、国民は大きな影響を受ける事になる。 これからの外交文書の公開から目が離せないということだ。 一般国民にとっては、外交文書を読み解く歴史学者、政治学者、専門家の 正しい作業がますます必要になってくるということである。 了
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