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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

沖縄知事選の結果をどう評価するか
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年11月29日発行第229号 ■       ===============================================================          沖縄知事選の結果をどう評価するか    ===============================================================  日米同盟を正面から否定する伊波候補が勝つことは革命的なことだった。 だからその勝利は容易ではないと思っていたが、私の予想以上に票差が開い た敗北であった。  この結果と今後の展開をどうみるか。  三点に絞って書いてみる。  一つは基地反対についての沖縄県民の本気度である。  今度の選挙結果を見て、沖縄住民は何を考えているんだ、それが沖縄県民の 意思であるのだからもはや何もいう事はない。県外の者が基地反対を叫ぶのは 馬鹿らしい、勝手にしろ、という声が基地反対者から聞こえる。  私はその結論を出すのはまだ早いと思っている。  今度の選挙で投票率が低かったこと、そして仲井真候補が勝ったことは、 やはり何と言っても仲井真候補が直前になって県外移転を言い出したことだ。 これで争点が完全にぼやけた。県外移転を訴えているのだから、地域振興も 同時に約束する仲井真のほうがよりベターだ、ということになる。  問題はこれからだ。  あくまでも日米合意の履行を求める民主党政権との条件闘争の過程で、 もし仲井真氏がなんらかの見返りと引き換えに辺野古受け入れを認める事に 豹変した時、果たして沖縄県民は仲井真知事をリコールするのか。それを せずに辺野古移転をなし崩し的に受け入れるようであれば、その時は私も、 沖縄は勝手にしたらいい、と突き放すことになるだろう。  二つは伊波氏のこれからだ。  伊波候補の今回の敗北の理由が、日米同盟の反対をあまりにも強く訴えた 事にあるという指摘がある。イデオロギー色が前面に出て住民の腰が引けたと いう声がある。  もしそうだとすれば問題は深刻だ。  私は最近次のような個人的経験をした。  過日NHKの担当者が私に面会を求め、12月に予定している日米安保特集 番組に出演してくれという。  日米安保を考えるという特集番組を数回に分けて企画するがその最終回に 「さらば日米同盟」の持論を語ってほしいという。  私はにわかには信じられなかったので、その依頼が上層部の了解を得たもの であり、私の立場を十分に話す事のできる時間的余裕のあるものであれば協力 したいと応じた。  案の定しばらく立って、この話は無かった事にしてくれという返事が返って きた。  そういう事なのだ。日米同盟に正面から反対することは今の日本では受け入 れられないのである。  しかし日米同盟がある限り米軍基地はなくならない。日本の平和外交は実現 できない。この事を日本国民にわからせなければならない。  これはイデオロギーとは関係ない。平和な日本を真面目に考えればたどり 着く結論なのだ。そしてそう考える国民は少数派ではあっても一定数はこの 日本に確実に存在する。  もし伊波氏がこんどの知事選の公約である「基地のない沖縄」、「戦争に つながる一切を許さない」を本気で貫く覚悟があるのなら、この敗北が終わり ではなく、この敗北をあらたなを出発点として、「沖縄平和党」の設立を宣言 して国政に打って出るべきだと思う。  保守大連立の流れの中で、既存の護憲政党が衰退の一途を辿っている中で、 いまこそ日米同盟に正面から異を唱える国民政党を結成する絶好のチャンスで はないのか。それができるのは伊波氏をおいてほかにいないのではないか。  私が再び政治に関心を持つとしたらその時である。  三つ目は、普天間問題はこれからどうなるか、という事である。  そしてこの事こそ私がこのメルマガで言いたいことである。  今後の見通しについてはどの報道も「混迷する」、「見通しが立たない」と いうことしか書かない。  しかし私には極めて明確な見通しがある。  それを見事に代弁しているのが11月29日の毎日新聞に掲載されていた 孫崎享元外務省国際情報局長の次の指摘だ。  「・・・ゲーツ国防長官は海兵隊の体制見直しを支持しており、普天間を なくした形で在日米軍の機能が維持できるかどうか、日本側から協議を持ち かける良い機会だ・・・」  その通りである。  菅首相が頭がよければこの孫崎氏の助言に乗って米国と協議すればいいのだ。  日米同盟を見直して辺野古に移転しない、そういう形を取らせてくれ。 そのかわりグアム移転のためにあらゆる財政負担する。どうせ移転時期は 米側の都合、グアムの都合で遅れざるをえないだろう。米国が辺野古移転 さえあきらめれば沖縄住民は万々歳だ。日本国民はだまされる。かくして 日米同盟は安泰だ。在日米軍も固定化できる。  こう米国を説得して表面的に辺野古移転で米側を譲歩させたという形をとる のだ。  私にとっては最悪の選択であるが、これがもっとも現実的な選択である。  孫崎氏もとんでもない知恵を菅民主党政権にさずけてくれたものだ。  彼もまた私と違って日米同盟支持者なのである。  そうでなければこの国では生き残れないのである。                               了

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