□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年11月28日発行第228号 ■ =============================================================== 最後の選択としての軍事休戦委員会の開催という提案 =============================================================== 北朝鮮の暴走にどう対応するのが正しいのか。 連日メディアはこの事で溢れている。 元官僚や学者、評論家が、そして挙句の果てはお門違いの者たちが、この 問題を言いたい放題論じている。 直接の情報を持っているわけでも、戦争というもの悲惨さを体験している わけでもない彼らの語る言葉に説得力はゼロだ。 そんな中で注目すべき提案を見つけた。 11月28日の産経新聞に載っていた、元国務省東アジア太平洋局上級 顧問という肩書きのバルビーナ・ホワン氏の次の言葉だ。 「(今回の北朝鮮の砲撃で極めて重要なのは)、米国が効果的に北朝鮮に 圧力をかける手段がないことが示されたことだ。米国の軍事力は北朝鮮に よる全面戦争や侵略行為を阻止してはいるが、限定的な挑発行為を思い とどまらせることはできていない・・・中国が、米韓のために自国の利益を 犠牲にすることはないということも、理解すべきだ。人民元問題や貿易摩擦、 レアアース、気候変動問題などでも中国は圧力に屈しなかった。なぜ北朝鮮 問題では中国が協力に転じると信じるのだろうか。6カ国協議の再開も中国 と北朝鮮を利するだけであり、最終的には何の解決ももたらさないだろう。 そこで、最後の選択肢として、軍事休戦委員会にすべての軍事案件の解決 を委ねる事を提案したい・・・」 私がこのホアン氏の提案で注目したのは、次の三点である。 一つは米国のやり方では交渉決裂か全面戦争の危険に至るかしかない、 という事を米国政府関係者が認めたという事である。 二つはこれからの戦争は全面戦争にはならないが今回のような局地戦争は 起こりうる事を認めたという事である。 そして三つ目は、戦争にかかわることは戦争の枠内での話し合いに委ねる べきだ、という事である。 全面戦争を回避する事は最悪の事態を避けるという意味で歓迎さるべき事 かもしれない。 しかし、これは全面戦争回避のためには局地戦争の犠牲はやむを得ないと いう事でもある。局地戦争の犠牲者が出て始めて休戦が始まるということ である。これではやりきれない。 戦争にかかわる事を政治交渉で決めるのが容易ではないとすれば、軍人を はじめから参加させた究極の話し合いをすべきなのだ。 その話し合いが成功しなければ全面戦争もやむなしという覚悟をすべての 責任者に迫る。 その上で全面戦争の最終的決断を国民に委ねる。 民主国家であれば全面戦争を選ぶ国民が多数を占める事にはならない。 何があっても戦争を行なう事はできないということになる。 そのことによって無益な局地戦争の犠牲者が出ることも防げる。 全面戦争を避けるためにはいかなる譲歩も国益になる。 私はこの提案を、そういう解釈で読んだのである。 了
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