□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年11月16日発行第207号 ■ =============================================================== 劣化した政治家と、無能な官僚が繰り広げる外交の姿がここにある =============================================================== おそらく今の日本外交の実態は、これから引用する11月14日の日経新聞 の描写の中にその姿が集約されているに違いない。 それはメドベージェフ大統領の国後島訪問をめぐる政府内部の慌てぶりを描 いた記事である。 ・・・(メドベージェフ)大統領の国後島訪問から2日間を経た(11月) 3日夜。首相官邸の執務室では、苦々しい顔で座る首相を囲み、気まずい空気 が流れていた。集まったのは仙谷由人官房長官ら数人。ロシアから緊急帰国を 命ぜられた河野雅治駐ロシア大使の姿もあった。 大統領が国後島を訪れるとの観測記事が流れた以降、日本の外務省は一貫 して「国後訪問はない」と報告し続けた。それを信じた官邸は強いメッセージ も出さず無策のまま訪問を許してしまった。 「いったいどういう分析であんな報告をしていたのか」。 官邸が問い詰めると河野大使は答えた。 「ロシア外務省がそう言っていました」。 その瞬間、同席していた首相は血相を変えた。 「じゃあなぜ状況が変わったと思うんだ」。 河野大使はしどろもどろとなり、ついに 「私はあまりロシアに詳しくないので・・・」と口走ると、ついに仙谷長官 の怒りが爆発した。 「なぜ歯舞、色丹は訪問しないのか」・・・ 日経の記事が描く官邸の描写はここで終わっている。 しかしここに書かれなくとも、その後の模様は容易に想像がつくという ものだ。 おりしも今日(11月16日)の朝刊各紙は、菅首相とメドベージェフ 大統領の首脳会談の直後というタイミングを狙うかのように、ロシアは今後 北方領土問題について日本と交渉しない、というロシア側の考えをロシア 有力紙が流したと報じている。 菅政権の外交の実態は、菅政権が外務官僚の言いなりで動いているの ではない。 だからといって菅政権が政治主導で正しい外交を官僚に命じているわけ でもない。 政治主導に反発する外務官僚が、菅政権に抵抗してわざとサボタージュ している、という見立ても間違いだ。 要するに菅政権に正しい外交をさせたくても出来ない無能な外務官僚が 一方にいる。 他方において、それに苛立ちを覚えるが、さりとて無能な外務官僚を更迭 して有能な官僚を抜擢・活用する政治主導力を発揮する器量は菅政権の政治家 にはない。 無能な官僚に不満を抱きながらも、無能な官僚に頼らざるを得ないのだ。 政治主導を発揮できず、さりとて官僚を使いこなす事もできない絶望的 な状況。 迷走は日露関係だけではない。日中、日米関係しかりだ。日本外交そのもの がこのような状態で行われている。 そしてそれは外交だけではない。あらゆる政策がこの通りに行なわれている に違いない。 菅政権の実態は想像以上に深刻であるということだ。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)