□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年11月5日発行第180号 ■ =============================================================== 私は佐藤優を手放しで評価しない =============================================================== 佐藤優と私を同じように見る読者がいる。 協力し合って今の日本を変えろと言う者がいる。 残念ながらとんだ思い違いだ。 彼の外務省批判は確かに鋭い。多くの点で私も共通の認識を持っている。 しかし彼と私には根本的違いがある。 その最大の違いは、彼自身が公言しているように、彼はイスラエルの諜報機関 モサドとつながってイスラエルのパレスチナ政策を正当化する言説を日本の メディアに流しているところである。 パレスチナの公正で永続的な平和を訴え続け、それに背くイスラエルを批判 してモサドに敵視される私とは正反対の立場にある。 しかし、その事を離れても、彼の外交姿勢と私のそれには大きな違いがある。 私は彼の言動が、無知な一般国民にかこつけて、時として事実に反 する危険な考えを流布していることを知っている。 たとえば10月22日の東京新聞「本音のコラム」に見られる彼の次のような 言葉である。 彼はそのコラムの中で藪中三十二前事務次官が最近上梓した「国家の命運」 (新潮新書)を紹介し、その中で藪中氏が「大事なのは尖閣諸島において日本の 法律が執行されることである。それこそが、日本が尖閣諸島を実効支配している ことを世界に示すことになる」と書いている部分を絶賛している。 今後も中国人が違法行為を行なえば、日本の官憲は躊躇することなく逮捕し、 日本の法律を執行することだ。現役の外務官僚も藪中氏の教えを忠実に継承 すべきだ、などとと書いている。 私は藪中氏の著書を読んだ事はないが、藪中氏が尖閣諸島の棚上げ論を否定 してそう言っているのなら無責任だ。 尖閣棚上げ論は同じ外務省のOBである孫崎享氏がメディアで発言している ように外務省内では周知の事実である。 それを裏付けるように来日中の唐家せん元中国外務相は、「日中国交正常化 では係争懸案を棚上げした。当時の政治家にはそうした知恵があった。過去 40年間、両国間に暗黙の了解があった」、と述べたと報じられている (11月5日読売)。 何をもって棚上げというのかによって論点は異なるかもしれないが、少なく とも佐藤氏のように法の執行ばかりを主張していては日中関係の改善はない。 その佐藤氏は得意の北方領土問題について11月5日の産経新聞に次のよう な寄稿をしている。 前原外相が国益を守る防波堤となっている。河野大使を事実上の召還をした 前原外相の判断は正しい。ロシアはそれにあわてふためいて「もうこれ以上、 怒らないでください」と言っている。日本は河野大使をどのタイミングで モスクワに戻すか、というカードを持っているのに対して、ロシアはカードを もっていない。メドベージェフ大統領が再び北方領土を訪問しないと約束させ られないぐらいなら日露首脳会談は行なうべきでない。日本の外務省は無能 集団に成り果てているので、前原外相の政治主導力により日本国家の生き残り を期待する、と述べている。 今の外務省が全滅の危機に瀕しているという点については同感だ。 しかし前原外相の政治的指導力がいまや日本の国益を守る唯一の防波堤で あり、その前原外相を支えて日本の国益を守れ、とする主張には私は賛同 できない。 前原外相の強硬外交では北方領土問題は解決しない。 ロシアの専門家である佐藤優がそれを知らないはずはない。 知っていながら前原外相の強硬姿勢を褒めるのは、前原外相に擦り寄って 見返りを期待するのか、何らかの作為による世論誘導であるのか、いずれに しても要注意だ。 もし本気でそう主張しているならロシアの事を何も理解していない事になる。 そちらのほうがより問題だ。 了
新しいコメントを追加