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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

尖閣・北方領土問題の敗北と日米同盟の破綻
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年11月2日発行第173号 ■       ===============================================================           尖閣・北方領土問題の敗北と日米同盟の破綻     ===============================================================  日刊ゲンダイと夕刊フジから立て続けにロシアのメドベージェフ大統領の 北方領土訪問についてコメントを求められた。  立場の異なる二つの夕刊紙から同時にコメントを求められるとは、菅民主党 政権の外交がそれほど酷いということだ。  批判をするならこの男に任せておけばいいという訳だ。菅民主党政権の外交 批判を思い切りやってくれと、これら二つの夕刊紙は私に求めて来たのだ。  期待に背くことなく、私は菅政権の外交の体たらくを切って捨てた。  実際のところ菅民主党政権の外交は亡国的である。  小難しい解説を試みても彼らの耳には届かない。批判しさえすればいいのだ。 原稿はあらかじめ決まっている。  ここでは日刊ゲンダイや夕刊フジに伝えなかった重要な視点を述べてみたい。  一つはなぜ領土問題がここに来て立て続けに表面化したのかということだ。  尖閣諸島の場合は明らかに前原、枝野らの不用意な対中強硬発言が一因だ。  しかしそれだけではない。  菅民主党政権の不統一さと菅首相の指導力の無さ、つまり菅民主党政権の 弱体さが領土問題についての中国の強硬外交を誘発した。  北方領土問題に至っては明らかに菅民主党政権の弱体のなせる結果である。  そもそも領土問題については主権国家として国民の手前お互いに譲れない のは当然である。  だから領土問題の真の解決は、かつての帝国主義時代ならいざ知らず、武力 による紛争解決を禁じている戦後の国際合意の下では、対等国家の間では決し て容易に実現されるものではないのである。  その事は中国もロシアも十分知っているはずである。  しかし、領土問題をめぐる当事国間の外交的攻防はその時の政権の強弱に よって大きく左右される。  尖閣諸島についても北方領土についても、今回の中国、ロシアの動きは まさしくそれが当てはまる。  菅民主党政権が弱体政権であるが故に中国もロシアも強く出てきたのだ。  このまま菅民主党政権が続けば、尖閣諸島についても北方領土にしても、 ますます日本から遠ざかるだろう。  その一方で、日本に強い政権が出来れば状況は変わるに違いない。  今は歩み寄りの余地がないような最悪の状況であっても、再び日本に安定 した強い政権が出来た時は、領土問題は後ろに追いやられ、二国間関係が進展 するのだ。  それが領土問題なのである。  もっと重要で深刻な事は、尖閣問題といい、北方領土問題といい、日本と 同盟関係のある米国が日本のために動こうとしない厳然とした現実である。  日本と米国は同盟関係にあるのである。米国と中国、米国とロシアの間には そのような同盟関係はない。  それなのに米国は、同盟国の日本が中国、ロシアと領土問題をめぐって ここまで対立しているというのに日本の側に立とうとしない。  何のための日米同盟なのか。  日米同盟関係の本質は軍事同盟である。しかしいやしくも同盟関係を結んで いる国の間では、有事に至らなくても同盟国同士が政治、外交的に支援し合う 関係にあるはずだ。  ところが米国は尖閣問題についてはその立場を曖昧なままに終始してきた。  そしてそのような米国の曖昧な態度は、北方領土の問題に関しては、もっと 深刻である。  北方領土問題がなぜここまで解決困難であったか。  その大きな理由は米国の日露分断作戦にある。  すなわち米国はサンフランシスコ講和条約で規定されている日本が放棄した 千島列島の範囲をわざと曖昧にし、その範囲をめぐって日本とソ連(ロシア)を 永遠に争わせようとしたのである。  前原外相は尖閣問題の解決に際し、日米安保条約の適用を米国が確認した事 を使って中国に圧力をかけようとしたが、中国の反発にあって米国はあっさり 引き下がった。  そのこと自体が日米同盟の意義に疑問を投げかけるものであるのだが、北方 領土問題については、米国が大きな決定権を持っているにもかかわらず、尖閣 問題以上に米国は動こうとしない。  これは日米同盟に不誠実な米国の態度である。  ところがその事に対して前原外相は米国に迫る気配はまるでない。  日米同盟の重要性をもっとも主張する前原外相が、ロシアに限っては米国に 対して日本支援を求めようとしない。  それは取りも直さず日米同盟が機能していないということである。  その事を前原外相自身が認めているということである。  日米同盟の限界を知りながら、国民の前では日米同盟重視を繰り返す。  ここに日本外交の矛盾がある。  もはや役立たずの日米同盟から自立できない日本外交の救いがたさがある。                               了                               

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