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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

尖閣問題をこじらせたのは外務官僚のチョンボではないのか
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン2010年10月25日発行第164号 ■       ===============================================================          尖閣問題をこじらせたのは外務官僚のチョンボではないのか    ===============================================================    尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化は、菅・仙谷政権がその命運をかけて 必死に修復しようとしているにもかかわらず、その先行きは不透明なままだ。  なぜここまで大きな問題になってしまったのか。  その検証なくしては今後の日中関係の健全な発展は望めない。  その原因の一つを私は10月24日の読売新聞に見つけた。  「政治の現場」と題する特集連載記事のその日の内容は「外交劣化 下」 であった。  その記事の中で次のようなくだりがあった。  ・・・仙谷は記者会見で「(深夜に中国側が日本の)大使を呼び出した事 は遺憾だ」と批判し、中国の反発を招いた。  実際、中国側は前日夕方に面会しようとしたものの、日程が合わず、未明 にずれこんだのが真相だった。仙谷周辺は「大使館が事実関係をきちんと 説明しなかったので、仙谷が不要な発言をさせられた」と不満を募らせた・・・  この記事が事実であれば、在中国日本大使館はとんでもない大きな間違い をしたということだ。  中国側は深夜に呼び出したのではなかった。前日の夕方に来てくれと 言っていたのだ。  それにもかかわらず日本大使は即座に応じる事はなかった。日程を調整して いるうちに会談が翌日の深夜となったのだ。  とんでもない在中国日本大使館の判断ミスだ。大使館の幹部である外務官僚 の外交センスのなさだ。  尖閣問題がこれほど大騒ぎになっている時だ。中国政府から呼び出された 時点で、どのような事情があるにせよすっ飛んでいくべきだった。丹羽大使の 首に縄をつけてでも連れて行くべきだったのだ。  もしそうしていればその後の展開は随分と異なったものになったに違いない。  少なくとも「深夜に呼びつけられた」という誤解を仙谷官房長に抱かせる事 はなかった。  その結果、我々国民も誤解をせずに済んだ。  実際のところ、私も新聞報道を見て、「深夜に大使を呼びつけるなど外交 儀礼に反している。中国は思い上がっている。丹羽大使はそれに軽々に応じる べきではなかった」、と思ったものだ。  事実は違っていた。  日程を調整しているうちに深夜の会談となったのだ。呼びつけられたのでは なかった。合意の上の深夜会談であったということだ。  そういえば思い起こす。  当時の新聞や週刊誌の中に、中国の外務大臣が日本の岡田外務大臣に緊急に 連絡しようとしたができなかった、日本の外務省への連絡は困難だった、と 中国が不満を述べていた、などという記事が散見されていた。  それらの記事を、日本の外務省は一体何をやっているのか、危機感はない のだろうか、などと私は読み流していた。その事を今になって思い出す。  今回の混乱は外務官僚の大失態のなせる業ではなかったのか。  それはまさしく習近平国家副主席の天皇会談の大騒ぎの時と同じだ。  あの時外務官僚たちが、中国側から寄せられた天皇陛下会談実現の要望を、 問題意識を持ってはやく官邸に伝え、官邸と宮内庁の間で緊急協議するように 働きかけていれば、一ヶ月ルールを破ったなどという馬鹿げた話にはならなか ったのだ。天皇陛下の政治利用などというピントはずれの議論は起こるはず なかった。  すべては外務官僚の怠慢である。外交センスの欠如である。  ひょっとして日本外交がここまで行き詰まってしまったのは、 外務官僚のつまらない判断ミスの積み重ねによるものではないのか。  誰も気づかないがその責任は重大だ。  外務官僚の実態を知っている私にはそう思えてならない。                                 了

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