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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

 この国の格差社会の本当の姿
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン2010年10月18日発行第152号 ■       ===============================================================             この国の格差社会の本当の姿     ===============================================================  先日ある社会活動家と話していて私の心によぎった思いを書いてみたい。  その思いは、私が毎日目を通している報道の根底に間違いなく流れている この国の現実ではないのか。あらためてそう思っている。  かつては一億総中流と言われたこの国に急速に格差がひろがったと言われ て久しい。  しかもその格差はどんどんと拡がっている。  しかし、格差とは何か。  強者と弱者の格差。富める者と貧しい者の格差。  それが一般的な受け止め方だ。  マルクスではないけれど、鎖しか失うものがない非搾取階級が、搾取して いる資本家や支配者に反旗を翻す。  行き着く先が革命ということになる。社会の秩序と権力の所在の逆転である。  しかし、それが起きるには、権力や資本を握った少数の強者と圧倒的多数の 弱者の格差が頂点に達し、弱い弱者でも団結して立ち上がれば強者を倒せると いう単純な構図が前提だ。  単純な格差の存在があり、その格差の対立が明快な場合だ。  もし、現実がそのような簡単な構図になっていないとすればどうか。  強者の間に格差があり、弱者の間にもまた格差がある。それぞれの組織や 集まりの中で強者と弱者が別れ、常に強者がその組織や集まりの中で弱者を 支配する。  そして、強者の中の強者が、弱者の中の強者と、強者同士のよしみで通じ合い 馴れ合って、それぞれの中の弱者を排除して行く。  弱者は弱者ゆえに、力もなく、団結もできないままバラバラに放置されて たままだ。  もしこのような構図が現実に進行しているのであれば格差社会の問題の根は 深い。ちょっとやそっとでは革命は起こらない。  たとえばだ。  官僚は強者だ。しかしその官僚の中にも強者と弱者が生まれる。弱者の官僚が 官僚組織の中でどのように正論を吐いても、弾き飛ばされる。  世間体に言えば官僚は弱者の敵ということになっている。だから世間では所詮 そのような争いは強者同士の権力争いだと思われてやりすごされてしまう。  たとえば労働組合は弱者の権利を守る組織のはずだ。しかしその組織の中で 強者が権力志向になって本来の活動を忘れたとしたらどうか。それに異を唱え、 本来の労働組合の原点に戻るべきだと主張する者が出たとして、それらが異端者 だと弾き飛ばされてしまうようならどうか。  経団連は大企業の集まりということになっている。法人税引き上げや武器輸出 三原則の廃止を唱える組織という事になっている。  しかしその中にも異論を唱える者はいるはずだ。法人税減税の一方で消費税を あげるのはおかしいと考える者、金儲けのために武器を売りつけるのは邪道だ と唱える者。それらの声がかき消されてしまっているのならどうか。  賢明な読者ならもうお分かりだろう。  弱者の味方であるはずの共産党や社民党でも強者と弱者の対立はある。  メディアでも大学でも、医療機関でも、農業組合でも、およそあらゆる組織、 集まりの中で、弱者と強者の格差が生まれ、強者が弱者を駆逐していく。  強者とは多数派であり、弱者とは少数派、異端者である。  格差社会の現実は、単なる強者と弱者の対立ではない。どこにでもある社会の 多数派が少数派を押しつぶす事こそ本当の格差社会の姿ではないのか。  少数派の権利が尊重され、それが受け入れられる社会こそ、本当の意味での 「格差を克服した社会」に違いない。  それこそが人類が求め続けていかなければならない社会に違いない。  今の日本にもっとも失われつつあるのはそのことだ。  問題は単純な強者、弱者の格差ではない。                                了

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