□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン2010年10月16日発行第150号 ■ =============================================================== 領土問題―もうひとつの視点 =============================================================== 領土問題についてこれ以上書いても無意味だ。 領土問題に一歩も譲歩しないなら行き着く先は軍事的に決着するしかない。 しかし、それが現実に取りうる政策でないことは誰の目にも明らかだ。 だから領土問題についての議論をこれ以上は繰り返さないが、最後に一つ だけ最近の論説の中で目に留まったものを紹介して終わりにしたい。 週刊アエラの10月18日号に軍事ジャーナリストの田岡俊次氏がこう書い ていた。 古来「領土、人民、主権」が国家の三大要素とされてきたから領土を神聖視 する論が多いのはわかる。 しかし領土が決定的重要性を持った狩猟や農業経済の時代と異なり、商、工、 サービス業が主体の今日では、国の消長を決めるのは資本、技術、情報であり、 領土面積は決定的要素ではない、と。 そしてその後田岡氏は古今東西の例を引用し、領土を軍事的に拡張したから といって必ずしも経済的にペイしたわけではない。それどころか負担が大き かった、と指摘する。 たしかに尖閣諸島の問題は領土拡大の問題ではない。漁業権やガス田開発 利権など経済的利害がらみの問題だ。 経済敵利害を調整する方策を見つける事こそ重要なのである。 彼は最後にこう締めくくっている。 テリトリー争いはアリでも必死になる動物の本能だから領土問題ではどの 国民も興奮し、政府も世論を恐れて強硬姿勢を示し、対立を激化しがちだ。 しかし、どの国も平素から貿易や金融など、対外協調の利を国民に説いて 領土本能を少しでも抑制するのが結局は得策なのだ、と。 一つの視点である。 この考えは突き詰めると憲法9条の精神に行き着く。 前原に象徴されるアリのような政治家が政権を取って、不必要な強硬発言を 繰り返している限り日中関係は改善しないということだ。 彼らはまた等しく憲法9条改正論者である。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)