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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

 日本国憲法を書いたチャールズ・ケーディス氏の言葉 
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン 2010年10月12日発行第141号 ■       ===============================================================             日本国憲法を書いたチャールズ・ケーディス氏の言葉      ===============================================================  産経新聞の古森義久ワシントン駐在編集特別委員は「体験的日米同盟考」と いう連載を産経新聞に書いている。  この連載は文字通り彼の体験に基づいて書き綴られた彼の日米同盟重視論で ある。  その考えの多くは私のそれとは異なるが、少なくとも彼の書く事が脚色のない 真実であれば教えられる事が多い。  10月11日の連載第28回は、日本国憲法9条の成立過程に関する体験談 が書かれている。そして、だから憲法9条は変えるべきだと書いている。  その記事は次のような言葉から始まる。  「『日本の憲法は米国が書き、押しつけてきたのです。内容がもう時代に 合わない以上、その改正には米国側も協力すべきです』   江藤淳氏が熱をこめて語った。米国人のほとんどの聴衆は黙ったままだ。 1980年3月、ワシントンのウッドロー・ウイルソン国際学術センターでの 研究発表会だった。この国際問題の大手研究所に研究員として来ていた江藤氏 は改憲の勧めを米側にまでぶつけるのだった。当時としては非常に大胆だった・・・」  そして古森氏はその江藤氏に勧められて1981年にチャールズ・ケーディス 氏に会ってインタビューした。その時のケーディス氏の言葉を次のように再現 してみせる。  チャールズ・ケーディス氏とは、連合国軍総司令部(GHQ)の民政局次長と して日本国憲法起草グループの実務責任者であった人物である。  私の頭の中には占領時代の歴史的人物というイメージしかないケーディス氏で あるが、古森氏がインタビューしたという1981年当時には、まだ75歳の 健在な弁護士だったのだ。決してそんな昔のことではない。  古森氏によればケーディス氏は1946年2月の10日間、日本の憲法起草に あたったという。いうまでもなく日本国憲法はその後1946年11月3日に 公布、1947年5月3日に施行されている。  そのケーディス氏は古森氏につぎのように淡々と語り続けたという。  「・・・憲法9条の戦争放棄などは私が書きました。ホイットニー局長 (註:GHQ民政局長であったホイットニー准将のこと)から渡された黄色い 用紙(註:いわゆるマッカーサー・ノートと呼ばれる憲法草案の大まかな内容 の指示)に3,4の要点の指示が書かれていました。同局長がマッカーサー 司令官の口述を記録したノートのようだと思っていました。そこには『自国の 安全保障のためでも戦争は放棄する』という記述がありました。しかし、どの 国にも固有の自衛の権利はある。だから私はその記述は理に合わないと思い、 自分の一存で削除しました・・・」  この言葉を引用した後に、古森氏は次のように解説している。  「・・・(憲法)草案は米国の陸海軍と国務省の連合組織が大枠を決めて いたが、具体的な部分は当時39歳の同氏のような現場の法律実務家たちに 任されていたというのだ・・・」  そしてケーディス氏の言葉の引用は続く。  「この憲法の意図は当初は日本を永遠に武装解除されたままにしておくこと でした。だが米国の対日外交の手をしばる効果をもたらし、米国としては賢明 ではない状態がうまれてしまったといえます・・・」  そして古森氏はこのケーディス氏の言葉を引用した後、次のように第28回の 連載を締めくくっている。  「・・・このように異端だらけの日本の憲法は日米同盟をも異色の形で縛り 続ける効力を発揮していくのだった」  つまり古森氏はケーディス氏の言葉を引用する事によって、憲法9条は、その 成立過程から見ても、そして日米同盟をその後の国際情勢の変化に合わせて強化 するためにも、改正されるべきであるという自らの考えを述べているのである。  私の考えはまったく逆だ。江藤淳の冒頭の考えと真逆だ。  米国が押しつけた憲法9条が米国を縛る事になった。  その憲法9条を米国はなぜ変えようとしなかったか。  日本の再軍備を許さないソ連ほかの連合国に配慮したこともあっただろう。  しかし、その憲法を受け入れ平和国家を誓った日本国民の反発をおそれ て改正しろと命ずる事はできなかったのだと思う。  そして、憲法9条を変えることなく、その憲法9条を否定する日米軍事同盟を 日本に締結させたのだ。  日本全土に、「好きな時に、好きなだけ、好きな場所に」米軍基地を置くこと を認めさせ、在日米軍の治外法権を飲ませた。  それがそのまま今日まで続いている。  いまこそ日本は米軍が押し付けた憲法9条を逆手にとって、憲法9条を日本の 最高法規として尊重することを再確認し、日米軍事同盟からの自立を目指すべき であると考える。  冷戦が終わって20余年もたち。国際情勢は様変わりだ。  あらゆる意味でこれ以上日米軍事同盟を続けていく事は日本国民のためになら ない。  いまこそ我々は戦争国家米国からの自立を目指さなければならない時である。  古森義久氏の「体験的日米同盟考」に惑わされてはいけない。                                  了

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