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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

菅直人首相の国連総会演説は史上最悪の演説の一つである     
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン 2010年9月26日発行 第112号 ■       ===============================================================           菅直人首相の国連総会演説は史上最悪の演説の一つである         ===============================================================  中国漁船衝突問題が国内でこれほど大きな問題になっているのに、そして オバマ大統領との形だけの首脳会談も終えたというのに、なぜ菅首相は日本に 飛んで帰って来なかったのか。  それはもちろん24日午後(日本時間25日未明)に控えた国連総会演説を 行なうためである。  ところがその演説をまともに報じる新聞は、世界はおろか日本の新聞でも ほとんどない。  報じるべき大事件が立て続けに起きた事もあるだろう。  しかしやはりその演説が饒舌の割にあまりにも空疎であるからだ。  空疎だけではない。国際政治の現実と矛盾した嘘を言い立てている。  その典型は国連安保理常任理事国入りを訴えた事だ。  日本が国を挙げて安保理常任理事国入りを目指した外交があえなく失敗に 終わったのは2005年9月の国連総会であった。  頼みにしていた米国が日本の安保理常任理国入りに反対した。これが一番の 障害だった。もちろん中国は一貫して反対の態度を貫いた。  それ以来、米国の態度は何一つ変わっていない。日中関係は今まさに最悪の 時期である。  国連を動かしている米中が反対している以上、国連改革など進むはずはない。  それどころか安保理常任理事国入りを主張する国はますます増えて、混迷の 度を増すばかりだ。  クウェートのナセル首相は国連演説の中でアラブやイスラム諸国の代表も 参加させろと言い出した(9月26日毎日)。米国が相手にするはずはない。  こんな最悪のタイミングであるのに、なぜ菅首相は外務官僚が書いた 安保理改革のくだりを政治的判断で切り捨てなかったのだろう。  その二つは、「核なき世界」の実現に向けて「国際社会の先頭に立つ」と 表明した事だ。  もちろんその事自体に異論はない。  しかし世界の前でそう大見得を切るのなら、それを現実の外交で示さなけ ればならない。  ところが現実の外務官僚の外交はその真逆を行っている。  核不拡散の最大の問題は、非核国への核不拡散を求める一方で、特定の国の 核保有国は認めるという二重基準(ダブルスタンダード)だ。  インドやイスラエルの核には目を瞑り、北朝鮮やイランの核は絶対に認めない、 という米国の身勝手さだ。  日本が本気で核廃絶・核不拡散を訴えるなら、この核の二重基準こそ厳しく 批判すべきである。  ところが国連総会が開かれているその時に、IAEA(国際原子力機関) 総会はイスラエルの核不拡散条約加盟を求めるアラブ諸国提出の決議案を 否決した。  イランやシリアの核疑惑が厳しい批判にさらされている一方で、核不拡散 条約に加盟することなく公然と核を保有しているイスラエルを黙認することは、 誰が見ても公平さを欠くだろう。  ところがその決議案は米国の強力な働きかけにより賛成46、反対51、 棄権23で否決された。  日本は賛成できなくても棄権はできたはずだ。どころか、世界の見ている 前でイスラエルの核を認める側について反対票を投じた。  この事は、米国の核抑止力を憲法9条よりも重視する日本政府の態度と 相俟って、日本には核廃絶・核不拡散を訴える資格がない事を世界に公言して いるようなものだ。  日本の首相が行なう最近の国連演説に世界が耳を傾けるものはない。  だから菅首相の国連演説が史上最悪のものであるとは言わない。  しかし、外務官僚の書いたものをここまで検証なく読み上げたという意味で、 間違いなく史上最悪の演説の一つである。  前原外相に演説を任せて日本に飛んで帰り、対中外交に指導力を発揮する振り を見せる。せめてそれぐらいの芝居をしたほうがよかった。                                了  おしらせ  日経ビジネスオンラインでは9月29日より、日本の新しい防衛政策を考え る特集が始まり、様々な有識者の「新防衛計画の大綱私案」が連載されます。  その第一回に私の意見が掲載されます。  関心のある読者の為に、日経ビジネスオンラインの案内を以下の通り紹介 しておきます。                 記 日経ビジネスは雑誌とオンラインで成り立っています。 雑誌は定期購読制です。こちらからお申し込みいただけます。 http://business.nikkeibp.co.jp/nbs/nbo/base1/index.html?xadid=002 オンラインはこちらでお読みいただけます。 http://business.nikkeibp.co.jp/ 会員登録(無料)していただくことで、すべての記事をお読みいただけ ます。 http://business.nikkeibp.co.jp/info/reguser/ 〒108-8646 東京都港区白金1丁目17番3号 NBFプラチナタワー 日経BP社 日経ビジネス オンライン Tel:03-6811-8188 Fax:03-5421-9160 日経ビジネス オンライン:http://business.nikkeibp.co.jp/

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