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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

米側の都合で先送りされた普天間移設問題とその大きな代償 
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン 2010年9月24日発行 第107号 ■       ===============================================================           米側の都合で先送りされた普天間移設問題とその大きな代償         ===============================================================  この原稿を書いている時点では菅・オバマ日米首脳会談は行なわれていない。 だから普天間移設問題の話し合い結果について日本のメディアがどう報道する か不明である。  しかし読まなくてもわかる。  普天間移設問題に関する日米合意の重要性を再確認するとともに、沖縄知事選 があるので普天間移設問題の解決は急がない事で一致した、という報道が判で 押した様に流されるだろう。  政府広報記事である。  その事自体は嘘ではない。政府広報であるからあからさまな嘘はツケない。  しかしそれは何も知らない国民を誤誘導する、限りなく嘘に近い広報記事だ。  その事について解説する。  米国防総省は21日夕(日本時間22日朝)、沖縄に駐留する米海兵隊 8000人のグアム移転について、日米合意である2014年の移転完了時期 が2020年までずれ込む見通しを明らかにした。 その事を9月23日の各紙 は一斉に報じた。  この米国のグアム移転延期の決定がすべてを物語っている。  周知のとおり普天間基地の移転問題は、1995年の少女暴行事件の怒りから 始まった。日米両政府はその怒りをかわすために移転を約束した。  本当は移転ではなく、少女暴行事件も関係なく、米側の都合による新たなヘリ ポートの建設であったのだが、ここではとりあえず移転としておく。  本来ならば沖縄から海兵隊出て行けというだけでよかったのに、太田知事は 米国の圧力に屈した橋本龍太郎首相の要請に譲歩して代替施設をつくる事を 飲んでしまった。ここから迷走が始まった。  以来迷走を重ねた日米交渉がパッケージ合意としてまとまったのが2006年 であった。  ブッシュのポチであった小泉首相が、退任直前のドサクサに紛れて米側に譲歩 したとんでもない置き土産だった。  合意の内容やその経緯は、今でも国民に本当の事は知らされていない。  あの合意の特徴の一つは、辺野古への代替施設を造らなければその他のすべて をチャラにする、海兵隊のグアム移転も勿論チャラだ、という脅しにあった。  米側の都合で海兵隊のグアム移転を決定しているにもかかわらず、あたかも 日本の要望にこたえた振りをして、そのかわり代替施設をつくれ、グアム移転の 経費を出せ、という虫のいい合意であった。  日本政府にとっては「沖縄住民の危険を減らす」という事が最大の関心事だ。 だからそのためには何でも飲む事になる。  そしてもし辺野古住民が移設に反対しなかったら、すべては日米政府の目論見 通りに進んで終わっていたはずだった。  ところが辺野古住民が体を張って建設に反対した。辺野古建設は進める事が できなかった。  その間に政権交代が起きた。  宇宙人の鳩山首相が「最低でも県外」と宇宙言葉を発し、沖縄県民に期待を 持たせた。米国は慌てた。  その後の顛末は日本国民が目撃したとおりである。  日米関係を悪化させたとして鳩山首相は非難され、2006年の小泉・ ブッシュ合意を焼き直した日米合意と引き換えに辞任した。  当然の事ながら菅首相に期待される役割は日米同盟関係の修復である。  首相の座を守りたい菅直人の頭には鳩山・オバマ合意を最重要視し、そこから 出発する事しかない。  しかし沖縄住民の反対はますます高まっていく。いくら沖縄を説得すると いっても、もはや辺野古に代替施設をつくる事は不可能だろう。  一体菅首相はどうするのか。  これがこれまでの皆の認識であった。  さて以上はおさらいである。ここからが今日のメルマガの趣旨である。  その後米側の都合で状況は急展開する。日米合意を変更せざるを得ない事情 が起きた。  グアムのインフラ整備、環境整備が間に合わないのだ。その最大の理由が 米国に整備のカネが出せなくなったことだ。米議会が十分な移転費を認めてくれ ないのだ。  おまけに、これまで日本政府が隠していた新型ヘリコプター・オスプレイの 沖縄導入が明るみになった。この事により、辺野古に建設するはずの代替施設の 滑走路交渉も白紙に戻る事になった。  要するにパッケージであると圧力をかけてきた米側が、自らの都合で日米合意 の変更を求めてきたのだ。  米側が普天間決着延期を了承するのは当たり前なのだ。  菅直人首相は、とりあえず11月までに沖縄県民を説得するという難問を 回避できた。  しかし喜ぶのはまだ早い。  これから米国と交渉を重ねてあらたな日米合意をつくらなければならないのだ。  そしてその交渉過程で、米国は今まで以上の無理な要求をしてくるだろう。  つまりグアム移転の経費の大幅増額だ。沖縄住民の危険を高めるオスプレイの 乗り入れだ。思いやり予算の増額だ。  その一方で在日米軍の治外法権を謳った日米地位協定には指一本触れさせない。  要するに在日米軍の固定化と強化が菅民主党空き缶政権の下で一気に進むと いうことだ。  2010年9月24日にニューヨークで行われる菅・オバマ会談の歴史的意味 はここにある。  メディアはこの事を国民に教えなければならないのである。                                了

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