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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

検察の改ざん・隠蔽発覚と菅政権の正統性の崩壊
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン 2010年9月23日発行 第106号 ■       ===============================================================           検察の改ざん・隠蔽発覚と菅政権の正統性の崩壊         ===============================================================  菅民主党政権は対中外交の失敗で早晩倒れる。  そう思っていたら、それより先に検察スキャンダルによって終わりになった。  そのことについて書く。  「検察の正義が完全に崩壊した」、とか、「あってはならない事が起きた」、 とか、「前代未聞の事件である」とか、そのような大げさな言葉が繰り返される 今度の検察の証拠改ざん・隠蔽発覚事件。  ならばその落とし前も、前代未聞の形でつけられなければならない。  前田なにがしという特捜検事の逮捕や検事総長の更迭などで終わるとしたら 茶番だ。  今度の事件の最大の見所は、今度の事件の発覚が、菅民主党政権の正統性と 小沢叩きを繰り返して菅民主党政権誕生に加担したメディアの責任問題にまで 行き着くのか。その一点にある。  そこまでいかないと、「未曾有の事件」に相応する「未曾有の落とし前」には ならない。  村木事件では前田は間違っていたが、彼の手がけたほかの事案は間違って いなかったかもしれない。  すなわち、朝鮮総連本部詐欺事件や小室哲哉や小沢一郎秘書の事件の捜査は 正しかったかもしれない。  しかし信頼性がここまで失墜した以上そのすべてに疑義が持たれる事になる。  それだけではない。今度の改ざんは最高検首脳も知っていた組織的なもの だったという。  この事により検察捜査すべての正統性が疑われる事になる。  そしてその事は、小沢一郎の「政治とカネ」の国策捜査への疑義に直結する。  この事を9月22日の朝日と9月23日の読売がおそるおそる書いていた。  「・・・いま、東京第五検察審査会では小沢氏を起訴するかどうかの審査が進む・・・その行方にも影響が及ぶ可能性すらある・・・」(朝日)。  「・・・小沢氏は検察審査会が2度目の『起訴相当議決』をすれば強制起訴 されるが、今回の事態を受けた検察審査会の判断への関心も高まっている・・」  しかし、朝日や読売がおそるおそる書いている程度の問題ではない。  今度の検察の「前代未聞の不祥事」は菅民主党政権の正統性と、小沢叩きで その政権の誕生に加担したメディアの一大責任に直結する不祥事なのである。 そのメディアに騙されたナイーブな国民の沽券にかかわる事なのである。  国策捜査があったかどうかが問題ではない。小沢の「政治とカネ」の問題が あったかどうかは問題ではない。  特捜全体の正統性が失われた以上、特捜のすべての言い分が疑われることに なるということだ。  実際のところ報道によれば、前田が手がけた朝鮮総連詐欺事件の弁護士たち が、前田検事の法廷証言を偽証容疑で告訴する方針を固めたと報じられている (9月22日毎日)。  本件と直接関係はないかもしれないが、仙台地裁は22日、レジャー施設 会社の不動産をめぐる詐欺事件に関連し、検察の取調べに誘導の疑いがある、 と判決で指摘したという(9月23日産経)。  1949年の三鷹事件で有罪となって獄死した遺族が死後再審の申し立てを 行なうという(9月23日朝日)。  要するこれまで検察に不当に捜査、聴取、訴追された者たちが一斉に自らの 潔白を主張し、捜査のやり直しを求める事ができるということだ。  検察の正統性が崩壊したということはこういうことなのだ。  検察のすべてが間違いではもちろんない。それどころか間違いは少ないのだ ろう。しかし信頼が崩壊した以上、すべてはじめからやり直せという要求に対し、 検察はもはやそれを拒む事ができないのだ。  前置きがながくなったが、ここからが私の言いたいところである。  なぜこのタイミングで改ざんが発覚したのか。前田も同僚検事も最高検幹部も、 事の重大さを今年の初めから知っていたというではないか。  今年の初めにこの不祥事が表ざたになり、検察への信頼がその時点で崩壊して いたら小沢の「政治とカネ」の問題の展開は間違いなく異なっていた。  マスコミの小沢叩きはここまで露骨にできなかった。  小沢を悪人視する世論調査の結果がここまで一方的に偏る事はなった。  そして世論の動向は間違いなく民主党代表選挙の帰趨に影響を与えていた。  これを要するに検察の改ざんと隠蔽が代表選の後に発覚したことは菅民主党 政権の正統性に疑義を抱かせるという事だ。  メディアは検察の隠蔽に手を貸して小沢の「政治とカネ」を叩き、菅 政権の誕生に加担したという疑念を生むという事だ。  正統性がなかったと言っているのではない。正統性に疑義があると言っている のだ。そしてこの事は深刻である。  正統性に疑義を持たれ続けるような政権はいくら形だけ存続しても死に体である。  メディアが菅民主党政権に加担したと断言しているのではない。検察官僚と通じ て小沢を叩いたのではないかと疑念を持たれたメディアもまた今度の事件で大きく 信頼を失ったといっているのだ。  そんなメディアがいまさら検察をどのように批判してもその言葉は自分に返っ てくるだけだ。  そしてメディアを鵜呑みにした国民である。何があっても小沢が嫌いだという 国民はいい。しかし、メディアの報道を鵜呑みにして小沢嫌いとなった者たちは、 誤誘導された怒りをメディアにぶつけなければ嘘だ。  今度の検察の改ざん・隠蔽事件の発覚は、単に検察崩壊の問題だけに閉じ込め られてはいけない。  菅民主党政権、メディア、国民を巻き込んだ壮大な総括が必要であるという ことだ。  それがこの「未曾有な事件」の「未曾有な落とし前」なのである。                                了

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