□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年9月24日発行 第108号 ■ =============================================================== 日米同盟の確認をやたらに演出する報道のうそ臭さ =============================================================== 普天間問題とならんで日本のメディアが強調する日米首脳会談のテーマが 尖閣諸島問題である。 そしてこの事に関しどの報道も「日米同盟が確認された」と報じている。 民主党のマニフェストであった「対等」がいつの間にか消えて、ひたすら 「深化」ばかりが強調されるようになった。 その象徴が「尖閣諸島への日米安全保障条約の適用が確認された」という 言葉である。 こんな事をオバマ大統領は菅直人首相に明言したとでもいうのか。 米国の官僚や軍人に日本が質問を重ね、そういう発言を引き出し、それを あたかも米国の総意のように見せかける。 それを日本のメディアが垂れ流す。 そんな報道の中で一番笑わせてくれたのが9月24日の読売新聞の次の ような記述だ。 「・・・米政府の高官はこれまで・・・領土紛争には中立の立場だと強調 したうえで、『日米安保条約は日本の施政下にある領域に適用される』、 『尖閣諸島は日本の施政下に置かれている』と、2段論法で安保条約が尖閣 諸島に適用されることを間接的に示してきた・・・(ところがキャンベル米 国務次官補は22日 読売の質問に対し)、『あなたが言った通り (尖閣諸島に安保条約を適用する)だ』と即答。安保条約の適用を直接的に 認めた・・・・」 執拗に質問を重ねて無理に言わせ、それを「安保条約の適用を直接認めた」 と結論づける。 「そんなに米国の意向が知りたければ口先だけでは何とでも言ってやる」、 こういう米側官僚の声が聞こえ来そうだ。 百歩譲って米側が日米安保条約の尖閣諸島への適用を認めたとしよう。 それがどういう意味があるのか。日中が軍事的に衝突した時に、米国が中国 と戦って日本を守ってくれるというのか。米国はそこまで明言しているのか。 米国側は有事の際の日本防衛については一言も言っていない。それどころか そんな事態にならないように早く中国と話し合って解決しろと言っているのだ。 その一方で中国はゲーツ国防長官を中国に招聘し、米中間の軍事協力関係を 回復させようとしている。シファー国防次官補代理は来週にも訪中するらしい (9月24日朝日)。 米国は一方において中国の軍事的脅威を唱えて日中を分断し、他方において 中国との対話を続けて米中でアジアを共同管理しようとする。 こんな米国の本音を知ってか知らずか、ひたすら日米同盟の確認を強調する 外務官僚とそれを広報する日本のメディア。 「日米同盟の正体」(講談社現代新書)を書いた孫崎享元外務省OBは、その 続編ともいうべき「日本人のための戦略的思考入門―日米同盟を超えて」 (祥伝社 2010年9月10日初版)を最近上梓した。 その中で孫崎氏は 「今、日本の安全保障政策は『米国に追随するのみ』と言ってよい・・ (35ページ)とばっさり切り捨てた上で、次のように書いている。 ・・・日本人の多くの人は、日米同盟の下、米国は領土問題で日本の立場を 強く支持していると思っている。だが、実態は違う。竹島では韓国の立場を支持 し、尖閣諸島では日中のどちらにもつかないと述べている。北方領土は(そもそも はじめから日米)安保条約の対象外だ。 びっくりすると思う。しかし、これが実態だ・・・米国は日本要因で米中戦争 に突入することを極力避ける・・・(164ページ)・・・(なによりも)米国 では戦争宣言を行う権利は議会にある。行政府ではない(160ページ)・・・ この言葉にすべてが語られている。 了
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