□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年9月16日発行 第96号 ■ =============================================================== いまごろになって小沢一郎の外交観を誉めそやす毎日新聞の論説委員 ================================================================ 考えてみれば私の日々の営みは日本のジャーナリストとの戦いのような 気がする。 戦いと言っても喧嘩するのではない。この日本を良くしようと思った時、 どういう事を書き続けるのが国民のために正しいか。それを知恵比べをする という意味だ。 現職を退いて一切のしがらみのない私は、競争社会で勝ち残らなければ ならないサラリーマン記者にくらべればはるかに有利な立場にある。この立場 の違いはとてつもなく大きい。 そういう有利なハンディをもらっている事を承知した上で、私はこの国の ジャーナリストと戦い続ける。 これから書くメルマガもその一つだ。 9月16日の毎日新聞「発信箱」に倉重篤郎論説委員の「小沢外相の勧め」 という論説を見つけた。 この題名から明らかなように、その記事は茶化した記事だ。 菅首相が小沢一郎を要職閣僚につけるはずはない。それを承知の上で、 次のように書いている。 代表選で見せた小沢の政策は「政治とカネ」のマイナスを吹き飛ばすような 新しい政治の方向を示すようなものはなかった。しかし安保・外交政策は あった。「対等な日米」の方向性が言葉の端々に見られた。菅首相からは出て 来ない日米関係のシナリオである。米国と官僚は嫌がるだろうが、小沢外相と いうのはどうだろう。菅首相にはそれくらいの度量が欲しい、と。 この記事を一読して私は腹立たしい思いを持って読んだ。それは敗北した小沢 の傷口に塩を塗るような記事だ。有り得ない小沢外相を承知の上で書いている。 「小沢氏も200人の議員の支持を得たからには、お返しとしてその剛腕を 政策で燃焼させる姿をみせたらどうか」などと真顔で書いている。 メディアは敗れてもなおとことん反小沢を続けるつもりらしい。 しかし、である。 私はこの記事をもう一度よく読んでみて、そこに私は倉重という論説委員の 本音を見る思いになった。 彼は書く。 ・・・普天間の袋小路は、この問題の根本的な仕切り直しによってしか抜け 出る道はない。その時のカギは、米国の軍事的な基本戦略の変化、つまり、 小沢氏の言うところの『(海兵隊など)前線部隊の一線からの引き揚げ』の流れ をどう読むかにある。そもそも小沢氏には91年の湾岸戦争時に、1兆円の 対米支援をまとめた日米機軸の原点がある、中国カード、国連カードを持っている・・・その一貫した国連中心主義は、憲法9条との整合性の中で日本の国際 貢献をさらに発展させうる、と。 倉重氏も内心では思っているのだ。今の日米関係では日本は救われないと。 そして菅首相では日米関係は従属的でどうにもならないと。 それでも小沢一郎を総理にすべきだとは言えない。書けない。 おそらくそんな記者が少なからず日本のメディア関係者の中にいるに違いない。 サラリーマンジャーナリストの悲哀だ。鬱屈した思いで毎日書き続けている ところもあるのではないか。 そう思ったとたん腹立たしい思いは消え、倉重篤郎論説委員に代表される日本の ジャーナリストが気の毒に思えてきた。 私は倉重氏に好意的過ぎるのだろうか。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)