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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

 菅政権の対中外交は日本の歴史に禍根を残す
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン 2010年9月13日発行 第91号 ■        ===============================================================         菅政権の対中外交は日本の歴史に禍根を残す                                     ================================================================  菅・仙谷・岡田の民主党政権の日本外交は、戦後史上に一大汚点を残すこと になるだろう。その事が日増しに明らかになっていく。  およそ米国を知らない彼らは対米従属に走るしかない。  しかしより深刻な問題は目の前にくりひろげられている対中外交の無策で ある。  日本の領海を中国漁船が侵犯し、海上保安庁の巡視船に接触・逃走した事件 が起きたのは9月7日であった。  その後に海上保安庁がとった一連の行動はいささかの非もなかった。  それにもかかわらず中国側の対応は一方的に日本を非難する。  ガス田交渉を延期し、船長釈放を要求し、正当に海上調査を行っていた海上 保安庁の測量船の調査中止を要求し、日本の大使を4度にわたって呼びつけて 抗議する。  これはあまりにも不当だ。  領土問題にかかわる紛争の解決は容易ではない。国家の主権にかかわる問題 であるからだ。いずれの国も国民の愛国主義的感情を考慮しなければならない。  だからこそ、その対応は的確、迅速に行なわなければならない。  それは事なかれ主義の外務官僚にはできない。外務官僚に任せることなく 日本の政治指導者が陣頭指揮を取り、首脳レベルで政治交渉を決断しなければ ならなかった。  その事により問題がすぐに解決する保障はもちろんない。しかし少なくとも 問題を封じ込める事はできた。それが重要なのだ。  外交は政治的かけひきだ。領海を侵犯されたのは日本だ。先に抗議すべきは 日本だ。呼びつけられるのは北京の丹羽大使ではなく、東京の中国大使だ。今回 の外交ゲームの主導権は日本にあったのだ。  世界に向けて第一声を発するのは菅首相であった。ところが菅首相、仙谷 官房長官、岡田外相の対応、発言は信じられないほど鈍感だ。 「冷静な対応」とは何もしないということだ。しかも周到な戦略に基づいて 「何もしない」のではない。どうしていいのかわからないのだ。  菅首相は事件直後の8日に記者団に対し、「厳正に対応していく」と述べた だけだ。それ以来何の指導力も見せていない。民主党代表選挙で街頭演説に 立った菅直人首相は一言もこの問題に触れなかった(9月12日産経)。  仙谷官房長官は報道陣からコメントを求められても取材に応じなかった。 逃げたのだ。  その間にも中国側の要求はどんどんエスカレートし、もはや外交敵常識を 逸脱した理不尽ぶりである。  外交は政治的駆け引きだ。どんなに激しくやりあっても軍事的対立に発展する ものではないし、そうさせてはならない。  それを承知で中国は日本に対しすばやく、そして強く出ている。  私が残念に思うのは、日本外交のまずさが中国の傲慢さをエスカレートさせ、 日本国民に「中国撃つべし」という反中国感情が湧き上がる事だ。  だから日米同盟による抑止力が必要だ、という声が当然視されることだ。  これほど間違ったことはない。  米中二大国はウラで手を結んでいる。米国は動かない。  日本は米国に従属一辺倒の一方で、中国からは馬鹿にされつつあるのだ。  かつて日中国交回復交渉の際、中国の周恩来首相をして、法匪と批判され ながらも、「中国にもああいう外交官が欲しい」と言わしめた外務官僚が日本 にもいた。  国内外の批判を覚悟の上、命がけで日中国交回復を成し遂げた田中、大平と いう政治家がいた。  国交回復の署名を行なったのは田中首相であるが、それを可能にしたのは あなたの誠意だ、と周恩来に言わしめた岡崎嘉平太という経済人がいた。その 布石を引いた高碕達之助がいた。  今の日本にはそのような人物は政・官・財どこを探してもいない。  そんな日本が菅・仙谷政権を生み、その政権が日中関係の将来を取り返しが つかないほど危うくさせようとしている。  これほど残念なことがあるだろうか。                                了                                                         

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