□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年9月12日発行 第90号 ■ =============================================================== 対立軸がなくなった民主党代表選挙 ================================================================ 菅か小沢かの歴史的な政治選択の結果がもうすぐ明らかになる。 その直前と直後にそれぞれ一回だけ私の意見を書いておくことにする。 後日振り返ってその正しさを確認するためだ。 私は今度の選挙では断然小沢一郎を支持する一人であった。だから限られた 読者を対象とするこの有料メルマガではなく、不特定多数が読む私のブログに 小沢支援のメッセージを折に触れ書いてきた。 メルマガとブログの違いはここにある。 立場を超えた不特定の読者に訴えたい時、私はブログであえて単純化した 挑発的な表現を使って訴える事にしている。 その9月9日のブログで鈴木宗男有罪確定の最高裁判決に触れ、嫌な予感が する、小沢一郎は負けるかも知れないと書いた。 するとすかさずそんな弱気な事を書くな、というメールが複数寄せられた。 小沢一郎に勝たせたい気持ちは私も同じだ。しかし私は根拠なく小沢勝利を 唱えるほどの小沢教信奉者ではない。 それにたとえ小沢一郎が負けても終わりだとは思わない。必ず菅政権は行き 詰まり、小沢一郎が代表選で訴えた事が正しかった事が明らかになる。 政局はこれからも続くのである。 代表選終盤の報道を見ていると小沢一郎が負けそうな情勢だ。 メディアが総がかりで反小沢を訴え続けてきた事は明らかだ。しかし世論調査 の結果がすべて捏造だとは思わない。質問の仕方や対象者によって答えの差は あるだろうが、そしてそれがメディアの偏向報道の結果小沢悪者のイメージが 国民の間で広く植えつけられたとしても、その世論は国民の声だ。それが代表選 の結果に影響を与えた事を否定してみてもはじまらない。 小沢一郎の戦いは周囲を敵に包囲された中での戦いであった。権力を握って いるのは菅首相だ。菅陣営はその背後にある権力に群がる様々な勢力が総勢で 支援しているのに対し、小沢は一人で戦っているも同然だった。 そんな戦いに勝つ事は最初から至難の事であった。 それでも小沢一郎が立候補宣言をした時は皆が驚き、最初の政策討論では小沢 批判を繰り返す菅よりも政策を訴える小沢が清新に映った。 ところが立会演説を続けるうちに戦いの行方がわからなくなった。 なぜか。その最大の理由は政策の違いが見えにくくなったからだ。 それはもちろん菅陣営が抱きつき戦法に切り替えたからだ。 国民を裏切った事を棚にあげて、厚顔にも国民第一の改革を行なうと強調し 始めたからだ。 その一方で小沢の対決調がブレ始めた。 菅と小沢の違いが見えなくなった時点で現職総理である菅が圧倒的に有利に なる。勝負は逆転する。 小沢の語る様々な政策の一つ一つの適否について仔細にコメントする能力は 私にはない。 しかし少なくとも外交については断言できる。 小沢の失敗は「日米合意を尊重する」と繰り返した事だ。 あの鳩山首相と同じ誤りを犯したからだ。 もちろん総理を目指す小沢は私のように「さらば日米同盟」を掲げる必要は ない。そんな事を言っていたずらに米国を刺激し、国民の不安を煽っては即座に 首相失格のレッテルを貼られる。 しかしそれと同じ事を、誰もが否定できない言い方で、国民の多くが共感を 抱く表現で言うべきだったのだ。 彼が真っ先に言うべき事は「日本の指導者として沖縄県民を見捨てるわけには いかない」という事だった。 この事だけを繰り返し強調し、菅民主党政権の対米従属振りを糾弾すべき だったのだ。 9月12日の朝日新聞に、「沖縄 怒り 疲れ 虚脱」という見出しの やりきれない記事があった。 それは、沖縄はかわいそうだといいながら結局は沖縄にすべてを押しつける 日本政府、官僚、全国メディア、そして国民への悲鳴である。 この沖縄県民の声に心を痛めない国民はいないだろう。 沖縄は独立したほうが言いといった菅首相や、オスプレイ配備問題を隠そうと した岡田外相などは弁解できないだろう。沖縄県民に合わす顔がないだろう。 なぜ小沢は国民の心を揺さぶるような言葉を投げつける事ができなかったのか。 なぜ小沢は菅政権の最大の弱点を突かなかったのか。 恐らく他の政策についてもそうに違いない。 国民を裏切った菅・仙谷政権との政策の違いを鮮明にし、菅と小沢の違いを 苦しんでいる弱者の国民に判りやすく訴える戦略が欠如していた。 小沢陣営が負けるとしたら、その原因はそこにあると私は思っている。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)