□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年9月14日発行 第92号 ■ =============================================================== 中国漁船問題を正しく報じない大手メディアの不自然さ ================================================================ 間違いなくこの国の大手メディアの報道姿勢には不自然さがある。 それは菅・小沢代表選挙の偏向振りを見れば明らかだが、それだけではない。 たとえばアスベスト問題だ。8月18日にスクープ記事を掲載して以来、 東京新聞は毎日のようにこの問題を大きく取り上げて問題提起している。 今日9月14日の一面でも首都圏全域の建設廃材からアスベストが検出・ 放置されている事を大きく報じている。 国民の健康・命にかかわるこれだけ深刻な問題であると言うのに、そして 公害・薬害被害に関する国の不作為の罪がこれだけ問題視されてきたというのに、 アスベスト問題をテレビも他の大手紙も一切報じないのはどう考えても不自然だ。 そして9月7日に起きた中国漁船衝突問題だ。 13日の午後、私は週刊ポストから電話取材を受けた。私のブログを読んで かけてきたという。今度の事件に対する日本政府の対応をどう思うかコメントを してもらいたいという。 その週刊ポストの記者と話すうちに気づいた。なぜ週刊誌なのか。なぜ大手 メディアはこの事件に関しての反応が鈍いのだろうか、と。 そして14日の各紙を注意して読んでみた。 この問題のクライマックスの時は新聞休刊日だった。ニュースというのは タイミングを逸すると報じる価値は半減する。 そのせいでもなかろうがこの問題を報じる14日の各紙はまるで低調だった。 書くには書いている。それなりの紙面も割いている。 しかし問題の深刻性が伝わらない。日本政府の無策についての批判はない。 この問題は困難だ、お手上げだ、と言わんばかりである。 社説で取り上げたのはわずか産経と日経だけだ。しかも産経は例によって尖閣 を守れというものだ。尖閣にヘリポートを整備して領土権を主張しろという ピントはずれのものだ。 日経の社説も、「中国漁船の不法行為や中国政府の背景に軍事的な思惑がない とは言い切れない・・・・安全保障面の警戒を怠ってはなるまい」というものだ。 この問題を軍事と結びつけてはならない。 外交力が試される問題だ。外務官僚がみずから考え出した「戦略的互恵関係」 という言葉が、単なる言葉ではなく日中双方の関係の原則になるかが試される 問題なのだ。 なぜ、朝日も読売も毎日も、そしてテレビも、この問題の深刻さを正面から 訴えないのか。日本政府の無策を指摘しないのか。 まさか民主党代表選直前の菅政権に不利になるから書かないということでは ないだろう。 中国政府に気兼ねして書けないということでもないだろう。 何なんだろうか。勉強不足か。単なる問題意識の欠如か。問題を大きくしたく ない外務官僚に丸め込まれているのか。 はっきりしている事は真実を国民に伝えようとしない報道に存在価値はないと いうことである。 我々は報道を常に懐疑的に読む必要がある。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)