□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年9月11日発行 第89号 ■ =============================================================== コーラン焼却騒ぎに見る米国の不治の病 ================================================================ 9・11事件にタイミングをあわせてコーランを焼却するというフロリダ州 の教会牧師があらわれて世界が大騒動になっている。 そんな事が出来るはずはないと誰しも思うだろう。 そんな事をすれば世界の反米感情が一気に高まり、米国の「テロとの戦い」 がますます行き詰まる。 だからこそオバマ大統領もクリントン国務長官も必死になってそれを止め させようと叫んだ。 牧師は「止めるわけではない。一時中止するだけ」と言っているらしいが 9・11に行なわなければ止めたと言うことだ。 しかしそれでも、最後はどうなるかわからないところが米国なのだ。 止めるか止めないかを論じるのがこのメルマガの趣旨ではない。 私が言いたいのは、「本来なら誰も相手にしない、イスラム教について何も 知らない牧師」(9月11日読売新聞エスポジト・米ジョージタウン大学教授) が、このような反国家的言動を行い、それを大統領もクリントン国務長官も とめられないという米国の救い難さである。 この大騒動の背景にあるのは根拠なき差別である。 そしてこの騒ぎが教えてくれた事は差別という不治の病から抜け出せない米国 社会の原罪である。 おりしもこの事を教えてくれるまったく別の記事を私はたまたま9月10日の 朝日新聞に見つけた。 「世界発2010」という特集記事は米ミシガン州デトロイトで最近起きた 事件を報じていた。 「おれたち近所に引っ越してくる黒人たちにはもううんざりだ。『8マイル 通り』の向こうに引っ越さないと、お前ら黒人を一人ずつ殺す」。 こんな手紙が十数軒の黒人宅に住所と名前のリストとともに送りつけられた という。 「8マイル通り」。 なつかしい言葉だ。デトロイト住んだことのある者は真っ先に耳にする言葉の 一つだ。 人口の7-8割が黒人といわれているデトロイトでは市外の中心に行くほど 黒人が集中し、白人は皆郊外に移り住む。 その境界を象徴する言葉が「8マイル通り」である。 今ではGMの本社となったデトロイト市外の中心にあるルネサンスセンター ビル。 そこから1マイルずつ市街の中心から離れていくにつれて通りが名づけられ ている。ちょうど8マイル走ったところから風景が変わる。 その朝日新聞の記事はこう書いていた。 「・・・米国で少数派が置かれた状況は『オバマ政権になって5歩くらい 後退した』(新聞編集長)・・・移民問題をめぐって民主・共和両党が角を突 き合わせ、溝を埋める役目を果たすべき穏健派も身動きがとれない・・・」 このような米国の人種差別が外交に現れたのが米国のパレスチナ政策である。 「テロとの戦い」である。 政権交代をしても、そんな米国との軍事同盟関係を最優先するようでは日本の 将来は危うい。日本もまた不治の病を抱える事になる。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)