□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年9月10日発行 第86号 ■ =============================================================== 年収いくらあれば幸福感を持てるのか ================================================================ 面白い記事を見つけたので紹介したい。話のネタとして使っていただきたい。 これから書くことは政治ネタを離れた四方山話のたぐいである。 しかしやはり今の政治の話題にこじつけられなくもない。 9月8日の読売新聞「編集手帳」というコラムにこんな話が書かれていた。 米国プリンストン大学の教授らが年収と幸福の関係を統計的に分析したという。 米国人45万人以上を対象にした電話調査をもとに考察したという。 収入が上がるにつれて生活の満足感は上昇するものの、幸せな気分は年収 7万5千ドル(約630万円)前後のところで頭打ちになるという。 米国と日本の所得水準がどの程度違うのかわからないから日本の場合はこの 数字がどれくらいの数字になるのかはわからない。 もっとも、財政破綻のカリフォルニア州ではシワルツネッガー知事が今年の 7月に州職員の20万人の給与を最低賃金(時給7.25ドル、円換算約 600円)並にすると決めたという報道があったくらいだから、もはや米国の 一般人の所得水準が特に高いわけではないのだろう。 この調査結果を見て、そのコラムを書いた記者は、「高収入で幸せになれる とは限らない」ということだ、と当たり前の事を書いている。 しかしその記者は同時に、安立(あんりゅう)スハルという歌人の、 「金で幸福はもたらされないというのなら、その金をここに差し出してみろ」と いう趣旨の一首を引用し、 「年収630万円で幸福感が頭打ちになるならば、一度、その天井に頭を ぶつけてみたい人は多かろう」と書いている。 この記事を書いた読売新聞の記者の給与は、年収630万円よりはるかに高額 に違いない。 だからひとごとのように書いているのだ。「幸福を感じるだけの630万円 ほどの年収を手にしたいと思う人は多いだろう」、と。 そうなのだ。 この調査結果が意味するところは、一定以上の年収を超えれば幸福感は頭打ち になる、という事もさることながら、一定以上の年収がなければ幸福感を味わえ ない、という厳しい現実なのである。 今の日本では年収が200万円以下の人口が急速に増えているという。 非正規雇用が常態化した結果だ。 その一方で、押尾事件で明るみになった、金とセックスと薬にまみれた俄か 実業家と権力者と闇の世界がつるんだ世界がある。 幸福感を味わえる年収に満たない人々が大勢を占めつつあるような格差社会に なってしまった日本。 だから日本は壊れていくのだ。 「国民の不幸を最小限にするのが政治である」と公言している菅首相は、この 米国の調査結果に思いを馳せて、幸福感を味わえない弱者救済を最優先すべきだ。 消費税引き上げや大企業に擦り寄って法人減税を口にしている時ではない。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)