□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年9月5日発行 第79号 ■ =============================================================== 菅民主党政権は財界から自立できるのか ================================================================ 月刊エルネオスという雑誌に元木昌彦編集長による連載対談「メディアを 考える旅」という記事がある。 その9月号の旅の同行者(対談相手)は経済評論家の内橋克人氏であった。 「今こそ、この人の話をじっくり聞きたい、そう思える人は数少ないが、 今回登場いただいた内橋克人さんはその一人である・・・」 こういう書き出しのその対談の中で内橋氏が語っていた次の言葉に私は 注目した。 「・・・脱官僚も必要ですし、対米従属外交からの脱却も必要です。が、 何よりも、官僚たちが執事として奉仕してきた日本の大資本・・・からの脱却 が必要なのです。 例えば、『もう一つの選挙民集団』。経団連の存在です。奥田碩経団連が 復活させた政治献金では、自民党と野党・民主党の政策をABCDで採点して、 経団連に忠実であれば政治献金を振舞いました・・・経済権力と言える経団連 がカネを出し、政治を動かしてきた・・・(そうしたことからの脱却も政権 交代には求められていたはずです)」 確かにそうだ。 私は、対米従属外交から自立して平和外交に転換する事や、この国の隅々 までに及ぶ官僚支配からの脱却にどうしても関心が向いてしまう。 しかし日本をここまで格差社会にしてしまった大きな理由の一つは、グロー バリズムという名の新自由主義の中で生き残ろうとする大企業の「企業の論理」 であったに違いない。 そしてそれを支援し続けてきたのが自民党政治であり官僚であったのだ。 私が内橋氏のこの言葉を思い出したのは、菅首相が9月4日の街頭演説で、 「政・菅・財の癒着から脱却する」と叫んでいた事をテレビで見たからだ。 小沢一郎の「政治とカネ」の問題ばかりを攻撃していては評判を落とすと 気づいたのか、それとも政権交代の原点を忘れたと非難されてはまずいと 悟ったのか、菅首相は俄かに政策論を語るようになった。改革政権を前面に 掲げるようになった。 それはいい事だ。 「政官財の癒着」とは使い古された言葉だ。しかしまさしくこの言葉に 自民党政権下の政策のすべてが凝縮されている。 自民党政権からの政権交代を成し遂げた民主党に期待されているのは、 菅直人首相が遅ればせに街頭演説で口にしたこの言葉に象徴される旧来の システムの設計変更なのである。 菅直人首相は過去3ヶ月、本気でそれに取り組んできたか。代表選挙に勝利 したあかつきにはその公約を実行できるのか。 そう思っていたら9月5日の日経新聞に、代表選挙期間中の9月9日にも 「新成長戦略実現推進会議」の初会合を開く方向で調整しているという スクープ記事を見つけた。 問題はそのメンバーと内容だ。 日経新聞によると菅首相議長、仙谷官房長官副議長、野田財務相の下に、 主要なメンバーとして米倉日本経団連会長、岡村日本商工会会頭、桜井経済 同友会代表幹事など財界トップが名を連ねている。 そのメンバーによって法人税の引き下げなどの前倒しを議論し、9月10日 にも閣議決定するという。 言っていることとやっている事がまるで違う。 財界首脳に顔を向けた新成長戦略の策定を急いでいる。 これではダメだ。やはり小沢氏に一度やらせてみる外はない。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)