□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年9月1日発行 第74号 ■ =============================================================== 民主党代表選挙と新防衛計画の大綱のゆくえ ================================================================ 民主党代表選挙一色の報道が続く事になる。そんな報道の中で決して誰も 触れないと思われる事をあえて書く。 それは民主党代表選挙の結果と今年中にも決定される新防衛計画の大綱との 関係についてである。 7月27日に菅内閣に提出された我が国の将来の安全保障政策に関する 有識者懇談会の報告書は、これは今までの安保論争を一気に右寄りに傾けて しまう内容を提言している。 すなわち、武器輸出三原則、非核三原則はもとより集団的自衛権の憲法解釈、 中国、北朝鮮の脅威のなどにつき、従来の考え方をすべて大きく変えろと言って いるのだ。 ところがそれを報じる7月28日の大手各紙はいずれもその事の重大性を 正面から国民に教えていない。 もっと驚いたのは日本共産党や社民党などの護憲政党がまったく反発しない 事だ。 この報告書については軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が、週刊アエラ8月 23日号で次のように厳しく批判していた。 すなわち「核持込み容認」や、北朝鮮を念頭においた「敵基地攻撃」や、 「台湾有事に備えた南西諸島への重点配備」など、どれをとっても現実の軍事 情勢から乖離した空論である、と。 田岡氏に言われるまでもなくあの報告書は日米同盟を固定化しようとする 意図が透けて見える報告書だ。 そもそも新しい防衛計画の大綱は自民党政権下で作られようとしていた。 そこに政権交代が起きた。 しかし鳩山民主党政権下で作られた「安保・防衛に関する有識者懇談会」の メンバーは自民党政権下で外交・安保問題を語っていた者ばかりであった。 その懇談会が菅直人政権になってもそのまま引き継がれた。 それどころか外交・安保問題は菅首相の手によって対米従属のそれに丸投げ されるようになった。 代表選挙に菅首相が勝って菅民主党政権が続けば、間違いなくこの報告書は 菅内閣が決める新防衛計画の大綱にそのまま反映されることになる。 それでは小沢一郎氏が勝って小沢民主党政権が出来れば新防衛計画は異なった ものになるのだろうか。 そこが最大の問題である。 今度の民主党代表選挙は小沢派と反小沢派の権力争いである。 しかし同時にそれはそれぞれが政策の違いを鮮明にして国民にこの国の行方を 提示して闘う政策選挙でもある。 そうしないと代表選挙の大義はない。国民から見放される。 そのような民主党代表選挙が行なわれる事になった事を私は歓迎する。 そして改革を逆戻りさせた菅首相より小沢一郎氏を私は支持する。 しかし私は単純な小沢賛美論者ではない。 小沢一郎氏はこの国の安全保障政策をどのように考えているのか。 果たして小沢一郎氏は今度の代表選挙でどのような外交・安全保障を掲げる のか。掲げないのか。 選挙に勝って首相になった場合、小沢一郎氏はどのような対米外交、安全保障 政策を進めていくのか。 そこのところがいまだ不明である。 私にとっての民主党代表選挙は、同時にまた新防衛計画の大綱がどうなるかを 占う重要な選挙でもある。 それはまた小沢一郎氏自身の最大の政策テーマでもある。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)