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天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説

天木直人(元外交官・作家)

天木直人

 潘基文国連事務総長の核廃絶演説の真価が問われるのはこれからだ              
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□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■  天木直人のメールマガジン 2010年8月28日発行 第70号 ■        ===============================================================        潘基文国連事務総長の核廃絶演説の真価が問われるのはこれからだ                                       ================================================================   少し前の事になるが、広島の平和式典に潘基文国連事務総長が国連事務総長 として初めて出席し、「核廃絶こそより安全な世界を実現する唯一の健全な 道だ」と訴えた。  この事を報じるメディアは好意的なものばかりだった。  そんな中でやっと初めて、「(潘基文国連事務総長は)核廃絶の誓いを 貫けるか、その真価が問われるのはこれからだ」、という冷めた論評を 見つけた。  私もまったく同様の思いを抱いていたので、その事を今日のメルマガで書き とどめておきたい。  8月27日の朝日新聞「記者有論」は、ニューヨーク支局の丹内敦子 (たんないあつこ)という記者の要旨次のような論評を掲載していた。  潘基文国連事務総長は雄弁に核廃絶の重要性を語り、そうした発言や行動を 日本の新聞やテレビは連日大きく取り上げた。  しかし国連の事務総長がかつて一度も出席したことがなかったほうが驚きで はないか。  なぜ今回はじめて国連事務総長の広島訪問が実現したのか。  現実の政治力学を踏まえれば米国が核軍縮・不拡散に積極的でない限り、 出席には踏み切れなかったはずだ。潘基文氏の今回の広島訪問の背景にはオバマ 大統領の米国のお墨付きがあったのだ。  だが日本で発した潘基文氏の言葉の真価が問われるのはこれからだ。  2012年以降の二期目に意欲を見せる潘氏は、仮にオバマ氏の再選が阻まれ 、米政権が核軍縮・不拡散を進める政策に転換したとしても、広島や長崎で 語った核廃絶の誓いを貫けるのか。  温かいもてなしは、日本の人々の「核なき世界」実現に寄せる期待の表れでも ある。それが裏切られた時の失望感は一層大きい事も潘氏は忘れるべきではない・・・  厳しい論評である。しかしこの論評は正しい。  この記事を読んで私は当時のあるニュースを思い出した 。  潘基文国連事務総長は広島訪問に際して日本からわざわざワシントンの クリントン国務長官に電話したというニュースが一瞬流れたことがあった。  クリントン国務長官にも広島に来たらどうかと薦めたのだと潘基文国連 事務総長はその時語ったと報道された。  そんな事を言うためにわざわざ日本から電話するだろうか。国連事務総長に 言われたぐらいで米国の国務長官が広島の平和式典に来るだろうか。そんな事を 潘基文氏は本気で思って電話したのだろうか。  とてもそうは思えない。  本当のところは潘基文国連事務総長しかわからないが、私はその時、広島式典 に出席して核廃絶を訴える事につき、なんらかの形で米国の了解が必要だったの ではないかと思っている。  実のところ潘基文国連事務総長のこれまでの評判はよくない。一月ほど前には 国連内部監査担当の事務次長(スウェーデン人)から指導力の欠如を糾弾された ばかりだが、それ以前にも内部からの同様の非難が一再ならずあった。  その理由の一つがその対米従属振りにあることは衆目の一致するところである。  だからと言って潘基文国連事務総長一人を責めるのは彼に酷だろう。 歴代の国連事務総長で対米従属でなかった者がいただろうか。  強いてあげれば任期を一期で辞めざるを得なかったエジプト出身のブトロス ・ガリ事務総長ぐらいだろう。  国連事務総長の地位が米国大統領のそれよりも大きくなる時、いや少なくとも 米国の利害から自立できる時、その時こそ世界に平和がくる時である。  その時はもちろん世界から核兵器はなくなる。                                了                        

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