□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年8月26日発行 第68号 ■ =============================================================== 米国議会で演説できなかった小泉首相 ================================================================ 日本の指導者たちがイラク戦争に口を閉ざすのは、ひとえに日米同盟関係を 堅持したいからだ。 そういえば聞こえはいいが、もっとありていに言えば米国から嫌われたく ないからだ。 しかし、日本の指導者にとってそれほど重要な日米関係であっても、米国に とっては一歩間違えばいつでも日本はかつての敵対国なのである。 それを思い出させる記事を8月26日の毎日新聞「発信箱」に見つけた。 「日米間のタブーを超えて」という見出しで書かれた布施広論説委員の論説の 中に次のようなくだりがある。 「・・・06年の小泉純一郎首相の訪米時、米議会の重鎮議員は『小泉首相が 米議会で演説したいなら靖国神社に参拝しないことを前提にすべきだ』という 書面を下院議長に送ったと報じられた。米議会の演壇は真珠湾攻撃直後、ルーズ ベルト大統領が日本の『恥ずべき行為』を非難した場所。そこへ靖国参拝を繰り 返す日本の首相を登らせてなるものかということだ。 演説は行なわれなかった。小泉氏が演説を望んだかどうかは問題ではない。 要は良好な日米関係のお手本のようにいわれる小泉政権下でも、米国内には 氷床のように冷たい部分があった。それが現実ということだ・・・」 口を開けば日米同盟関係の重要性を繰り返す官僚たちや、その官僚たちの言う ままに日米同盟重視を鸚鵡返しする政治家たちは、果たしてどこまで米国という 国を理解して対米外交をしているというのか。 因みに米議会で演説できなかった小泉首相は、その替わりでもないだろうが、 エルビスプレスリー記念館を訪れて日米親密さを装う痴態を演じた。 しかし小泉首相が敬愛するエルビスプレスリーは、真珠湾攻撃で撃沈された 戦艦アリゾナ号を慰霊したアリゾナ記念館がハワイに建設された時、多大な個人 献金を行なったほどの米国人だ。 当時その事を指摘するメディアは皆無であった。 米国の事を何もわかっていないこの国の指導者たちが、ただひたすらに日米 同盟の重要性ばかりを唱える。 ここに日本外交の底浅さがある。 偽物の日米同盟関係がある。 了
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)