□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】 ■□■ □■ 天木直人のメールマガジン 2010年8月22日発行 第63号 ■ =============================================================== 私が菅民主党政権を支持しない理由―官僚支配を復活させた罪 ================================================================ 私は自民党から民主党への政権交代を強く望んだ一人だ。 民主党政権の小沢・鳩山体制がこけた後は、その後を引き継ぐのは菅直人氏 しかいないと考えて菅首相の誕生を歓迎した一人である。 しかしその私が、今は菅直人首相の居座りに強く反対する。 なぜか。 それは菅直人氏が、総理の座を維持する事を最優先するために、仙谷を筆頭 としたいわゆる民主党の親米・親官僚グループの傀儡に成り果てたと考える からだ。 自民党のチェック機能が働かなくなった今、このままでは菅・仙谷民主党は 独走する。 米国とその米国の手先になった大手メディアに支えられて、かつての自民党 以上の親米・親官僚体制になる。 その結果日本は本物の格差社会となっていく。支配者層と被支配者層が固定 されていく。 そんな日本にしてはならない。 菅・仙谷民主党政権の安全保障政策・対米外交が、今まで以上に対米従属に なる危険性についてはあらゆる観点からこのメルマガで書いてきた。 沖縄問題や新防衛計画の大綱、さらにはテロとの戦い、原発協力、武器輸出 など、数え切れないほどの右傾化が、それを食い止める政治勢力の不在の中で 歯止め無く進んでいくだろう。 その事をこれからもこのメルマガで取り上げていく。 しかし、ここではもう一つの失望、つまり官僚支配の復権について書く。 最近の動きを見ていると目に余るからだ。 海上保安庁のヘリ墜落事故がデモ飛行中に起きた事が隠蔽されていた。 隠蔽を支持した張本人の第六管区本部長が、事故とは直接関係ないので発表 しなかったと開き直った。 保身ための隠蔽とそれがばれた時の説明にならない開き直り。 官僚支配復活の象徴のような光景だ。 8月20日の朝日新聞は外務省所管独立行政法人・国際協力機構(JICA) の天下り先社長の報酬がJICA理事長の報酬と同じくらいの高額である事実を スクープした。 どこの省庁でもゆずれない天下り法人を抱えている。JICAは外務省の利権 の伏魔殿のようなところだ。これまでもあらゆる不明朗が指摘されてきたが見過 ごされてきた。 蓮舫議員の事業仕分けは本物ではないという事だ。 弱いものいじめをする一方で官僚組織の中枢には決して切り込もうとしない。 8月20日に外務省の大使級人事が公表された。一般国民にとってはピント こないだろうがこれは外務官僚がすべて決めた予定調和の官僚人事だ。 中でも年金問題の不祥事で官界を追放されたはずの元社会保険庁長官が駐 スウェーデン大使に復活し、鈴木宗男事件で暗躍した元ロシア課長が欧州局長に 復活した人事は官僚支配の復活を象徴しているような人事だ。 きょう8月22日の日経新聞は国際金融情報センター理事長の大場智満氏が 勇退し、加藤隆俊元財務官の起用が内定したと報じていた。 典型的な天下り法人である国際金融情報センターの理事長は、財務官経験者の 順送りポストだ。それがそのまま踏襲されている。そこには政治主導のかけらも ない。 これらは氷山の一角である。 もはや菅・仙谷民主党は自民党時代以上に官僚組織と親和的になってしまった。 菅首相に代わる人物がいるのか。 小沢一郎なら対米自立、脱官僚ができるのか。 民主党政権より好ましい政党や連立政権がありうるのか。 そんな事はわからない。知ったことではない。 しかし期待を裏切った菅首相の居直りを私は認めない。 その先にはあらゆる可能性がある。 政治が混乱する事を恐れるな。政治が混乱するということは国民が主役に なるということなのだ。
天木直人のメールマガジン ― 反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説
天木直人(元外交官・作家)