… … …(記事全文2,467文字)量子コンピューターは「兵器」ではない
―― なぜそう誤解され続けてきたのか
量子コンピューターは、しばしば「次世代兵器」のように語られる。暗号を破る、国家機密を暴く、戦争の形を変える――そうした言葉が先行し、「量子=軍事技術」というイメージが定着してきた。
だが、この理解は正確ではない。量子コンピューターそのものが兵器なのではない。国家の力の源泉に直結する分野に影響を与えるため、軍事の文脈で語られてきた、というのが実態に近い。
【暗号の話が一人歩きした】
量子が注目された最初のきっかけは、「暗号を解読できる」という説明だった。特に、素因数分解を高速に行える可能性があるという理論は、「軍の通信が丸裸になる」という不安を一気に広げた。
しかし現実には、実用規模の量子計算はまだ限定的であり、同時に量子耐性暗号の研究も進んでいる。「ある日突然、すべての暗号が破られる」という状況ではない。
それでも、「国家の通信に影響し得る」という一点だけで、量子は軍事の言葉で語られやすくなった。
【出発点が国防予算だったという事実】
量子研究の多くは、冷戦期から米国の国防総省や情報機関、国家研究所が支えてきた。これは量子が兵器だったからではない。
基礎物理であり、成果がすぐに出ず、長期投資が必要な研究は、軍事・国防予算と相性が良かったからだ。インターネットやGPSと同じ構造である。最初に軍が支え、後から民生へ広がる。
この「出自」が、量子=軍事技術という印象を固定化した。
