… … …(記事全文3,227文字)【自衛隊では週1人の割合で自殺者がでている】
自著「こんなにひどい自衛隊生活」の中で、平成29年度から令和3年度までの自衛隊での自殺者数の表を掲載した。この著書では、トイレにはられた異様な張り紙を例に挙げて、自衛隊内の自殺問題について論じている。
自衛隊内の自殺者数は、2017年度84人、2018年57人、2019年54人、2020年59人、2021年53人。1年は52週なので、週に1人だと52人。つまり自衛隊では、毎週1人以上の自殺者が出ている計算になる。
自衛隊員の募集が危機的な今、さらにその足を引っ張るような「こんなにひどい自衛隊生活」の出版は、募集に悪影響だからやめてくれという自衛隊の立場もわかる。しかし反対に、自衛隊に入隊直前の時期だからこそこの書籍が出版されるべきではないかという人もいる。
今の自衛隊内の職場環境は、安心して就職していい環境とは言いがたい。7日に1人の自殺者が出る職場環境では、入隊後に戦争や災害派遣といった任務ではない場面で尊い命が失われるリスクがある。そのことをあえて公にし、「悪い職場環境を隠して入隊させるより、今こそ世論に訴えてすべてを改善し、正々堂々と自衛隊はごらんのとおり素晴らしい職場だ」と言えるようにしてから隊員を募集すべきだろう、という私の思いを理解してくれる人も多数いる。
私も自衛官募集相談員を務め、知り合いの息子さんやお嬢さんが防衛医大、防衛大学、海上自衛隊、陸上自衛隊、航空自衛隊に入隊するお手伝いをした。みな志があり、覚悟して自衛隊に入隊した。しかしその多くが、長時間労働や過酷な勤務体系に身心を故障し、同期の自殺などをきっかけに退職していった。
どんなに優秀で志の高い人でも、勤務外の当直や警衛で休みを削られれば、意欲は低下していく。特に潜水艦のように毎週勤務外の当直があって、徹夜した直後に通常勤務をしなければならないような過酷な勤務体系を耐えられる人はいない。
健康で何の病気も無かった人達が、身心を病んで辞めていくのは見ていられない。隊員を募集するより先に、この過酷な職場環境を変えていただきたいと願う。