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高安カミユ(保守系コラムニスト)

高安カミユ

ミュンヘン安全保障会議で見えた未来:旧秩序は終わり、欧州は脱炭素を捨てる

2026年2月、ミュンヘン。

バイエルンの冬空の下で開催された第62回ミュンヘン安全保障会議は、後世の歴史家が「20世紀的秩序が完全に埋葬された場所」と記すことになるかもしれない。

マルコ・ルビオ米国務長官と、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相の二人の発言は、「旧秩序」という幻想を打ち砕くものだった。

ならば「旧秩序」とは何なのか?

今回、この会議で露呈した世界の地殻変動と、欧州が直面する「残酷なリアリズム」の正体を解き明かす。


「旧秩序」との決別

「世界は我々の目の前で、凄まじいスピードで変貌を遂げている。旧世界——私が育ったあの時代——は、もう過ぎ去ったのだ。」


米軍のジョイント・ベース・アンドルーズを出発する際、ルビオ国務長官が記者団に放ったこの言葉は、ミュンヘンの会場にも重く響き渡った。
ルビオ氏が言う「旧世界」とは、冷戦終結から2020年代初頭まで続いた、アメリカという唯一の超大国が守護する「一極支配(ユニポーラ・モーメント)」の時代を指す。
つまり「旧秩序」と同意義だ。
これに呼応するように、ドイツのメルツ首相は、会議の冒頭でさらに踏み込んだ認識を示した。
国際的な秩序は「もはや存在しない」と。

この二人の発言は、単なる外交的な警告ではないし、ウクライナ問題だけを指すものでもない。それは、戦後80年間にわたって世界を規定してきた「米欧一体の秩序」が、もはや維持不可能であることを認めたも同然の発言だったのだ。


欧州の格下げ

アメリカは国家安全保障戦略で、欧州の優先順位を明らかに下げた。
今一度、国家安全保障戦略を振り返ると、アメリカの優先順位は下記の通りになる。


第一優先:西半球(南北米大陸) 「モンロー主義の再定義」を掲げる現在のアメリカにとって、最優先課題は自国の足元にある。国境管理、麻薬対策、そして中国による中南米への浸透阻止。アメリカは今、再び「要塞アメリカ(Fortress America)」としての内向きな防衛を戦略の核に据えている。グリーンランド問題も、この一環として存在する。


第二優先:アジア(対中国) 経済的覇権を争う中国への抑止、特に第一列島線を巡る軍事的な均衡が次点に位置する。アメリカの資源と関心の大部分は、今や大西洋ではなく太平洋に注がれている。


第三優先:欧州 かつての「最重要同盟」は、今や3番目のカテゴリーへと「リプライオリタイゼーション(再優先順位化)」された。アメリカにとっての欧州は、もはや「無条件で守るべき対象」ではなく、「自立すべきパートナー」へと格下げされたのだ。


ルビオ氏は「欧州とは依然として繋がっている」とミュンヘン会議でも、繰り返しているが、国家安全保障戦略において3位にランクダウンしている。
実は4位はないのだ。
4位はアフリカなどで、アメリカは関知しない世界となる。
つまり、欧州はアメリカが関知しない国になる一歩手前ということだ。
欧州が4位になれば、アメリカは当然、NATOからも脱退するだろう。
つまり、メルツ首相やルビオ長官がさす「旧秩序」とは、「アメリカが守るヨーロッパ秩序」という意味なのだ。
つまり、優先順位3位になった欧州は、アメリカが提供してきた安全保障を、欧州側が全額負担せよという最後通牒に他ならない。
これまで欧州が享受してきた「平和の配当」は、アメリカという巨大なパトロンが肩代わりしていた「負債」に過ぎなかったのだ。その負債の取り立てが今、凄まじい利息と共に始まったのである。

第二次世界大戦後、アメリカはNATOを通じて欧州に安価な安全保障を提供してきた。欧州諸国はその「浮いたコスト」を社会保障や経済発展に回すことができた。ルビオ氏が「古い世界は過ぎ去った」と言うとき、それは「アメリカが欧州の防衛費を肩代わりし、欧州がその上で経済的繁栄を謳歌する」という国家運営モデルの終焉を示している。


ならば、欧州はどうなるのか?そして日本は?

後半では、この核心に迫る。



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