… … …(記事全文3,740文字)◆マクロン大統領の「日本への引き渡し妨害」
反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」の元代表、ポール・ワトソン容疑者は今年7月、グリーンランドの首都ヌークに船を停泊させた際に逮捕されました。12月17日、5カ月間の拘束ののち釈放され、家族の住むフランスに帰りました。彼は2010年2月に南極海で日本の調査捕鯨船への業務妨害を指示し、乗組員にケガをさせた容疑で2012年に国際手配されました。グリーンランドはデンマークの自治領です。日本とデンマークは犯罪人引渡し条約を結んでいませんが、政府は海上保安庁警備救難部(捜査機関)の彼末浩明部長をデンマークへ派遣し、ワトソンの身柄を日本へ引き渡すように交渉していました。しかしデンマーク司法当局は日本の要請を拒否しました。
デンマークは反捕鯨国ではないし、反日国でもありません。今回のデンマークの決定の背景にはフランスのマクロン大統領の介入がありました。反捕鯨国であるフランスは国際手配されたワトソンをこれまでも匿ってきた前科がありますが、今回もデンマークに「ワトソンを日本に引き渡すな」と圧力をかけたようです。日本政府とフランス政府の板挟みになったデンマークは困ったことでしょう。しかし犯罪者を釈放してしまったデンマークに対して、日本はせめて大使を呼びつけて抗議するべきだったでしょう。引き渡しを実行させるために日本も他の捕鯨国を巻きこんで国際世論を形成するべきでした。捕鯨自体の正当性を争うのではなくSSが「環境保護」の美名の下にやっている行為がいかに危険なものであるか、を世界に問うべきでした。