… … …(記事全文4,323文字)●老老介護殺人事件裁判
「老老介護殺人事件」というメディアのタイトルは見るだけで辛くなる。昨年、東京都府中市で102歳の母親を1人で介護していた71歳の娘が紐で首を絞め殺害したという事件だ。その裁判の判決が最近下された。年齢的に他人事とは思えず注目していた。裁判長は、被告人に検察側の懲役8年の求刑に対し懲役3年、保護観察付きの執行猶予5年を言い渡した。また裁判長は、「確実に殺害するために危険性の高い行動をとっていて、強固な殺意が認められる」と指摘する一方で、「自身も高齢になっていたことから介護負担は決して軽いものではなかった」と同情の余地が大きいことを示したとのこと。
●裁判で明らかになった老老介護の現実
被告人は、2012年から母親と同居し、12年間にわたって介護を1人で担っていた。母親は認知症の症状が出始めたが、介護サービスを利用しながら生活していたという。以下、被告人の証言と私の見解を記す。
⇒被告人
「事件の5年前くらいから、ご飯を食べたばかりなのにご飯はまだ?と尋ねてきたり、私の言っていることを理解しなかったり。助けてくれる人が思い浮かばず、ひとりぼっちになったような気持ちでした」
事件の1週間ほど前から事態が変わったという。
「母は自力で移動できなくなり、10分おきにトイレに行きたいと言うようになりました。私が抱きかかえて連れて行きました」
「腰が痛くなってきて、母を運べなくなりました。オムツに用を足すよう説明しても母は理解できず、ケアマネージャーに施設に入れたいと頼みました」
【筆者見解】
母親は施設に入るのを嫌がっていたとのことだが、説得してようやく納得させた翌日に事件は起きた。「腰が痛くなる」のは当然のことである。抱きかかえてトイレに行くだけでも相当な負担がかかる。老老介護なのでより負担になる。私にも同じ経験があり、今も腰の状態は良好ではない。介護サービスを利用していたようだが、もっと早く状態が悪化する前に施設に入ることはできなかったのだろうか。少なくとも東京の方が人口は多いが施設数もそれなりにあるはずだ。ケアマネージャーの役割は重要である。
⇒被告人
ベッドから落ちた母親を発見したときに、
「誰かに助けてもらおうと119番通報をしました」
「『今回は向かいますが、本来の仕事ではないので、次からはかけないで』と言われました」
【筆者見解】
この消防の対応は冷酷過ぎる。人が人を運ぶのはそう簡単な作業ではない。搬送するのも消防の仕事である。「次からはかけないで」。こんなことを言う必要は更々ないだろう。労いの言葉の一つでもかけてあげたらどうなのか。この一言が、被告人を精神的に追い込む一因となったのは間違いない。私の母の場合、腰に激痛が走ったため、病院へ連れて行こうと思った。自家用車を利用しようとしたが、私と弟2人でも母親を抱きかかえることはできなかった。そこで、119番通報をし救急搬送してもらった。しかし、搬送先は整形外科がない病院であり、転院を繰り返した。これが現在の医療体制なのだ、と脱力したことは旧稿でも述べた。
